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黒い画集 第二話 寒流のn0701のネタバレレビュー・内容・結末

黒い画集 第二話 寒流(1961年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ある銀行の出世争いの中で、常務取締役の男が自分の部下を池袋店の支店長に抜擢させる。若く、有望なその男は、卒なく仕事をこなす所謂イエスマンだ。

大きな後ろ盾もなく、常務取締役の男もただ同期というだけで引っ張り上げたというもの。男の地位には確固たる根拠がなかった。

一方の常務取締役は強かで、多くの敵を作るも誰も彼を引きずり下ろせない。

支店長の男は、順風満帆な仕事とは裏腹に家庭は顧みず、病に伏した妻との仲は冷めきっていた。

ある日、支店長の元に融資の依頼がくる。
その女は一人で池袋の離れた場所に店を構える女主人で、繁盛もあり、店の大幅な増築を計画していた。

融資額は1000万円。今の一億円程度であろうが、支店長は彼女の利息に対する誠実さ、客足を考慮し、融資を決断する。

すると、稟議を通す際に常務取締役に「君のようなやつは頭が固くていかん。一度店を見てきたまえ」と諭される。

それがこの映画の根幹かつ重要なポイントだ。後に発生する支店長と常務取締役の軋轢もチェック、ダブルチェックに基づく根拠がないが故に支店長は大敗する。厳密に言えば、完膚無きまでに打ちのめされるのだ。

物語は中盤まで支店長と美人の女将の不倫物語となる。

結局のところ、女将の店が繁盛していたのは、女将の美貌に魅入られたスケベ心が見え見えの男たちがわんさか近づいたからであった。

この女将は、つまるところ、店のため、金のためなら誰とでも寝るし、どんなことでもする女だった。

そして、その女を中心に、支店長と常務取締役の確執と軋轢、復讐し復讐されるなんとも情けない戦いが始まる。

ある日、女将が1000万円の融資では増築費用を賄えないと銀行に相談に来ると、常務取締役が偶然女将と出会う。その瞬間、彼はこの女の虜となる。

支店長と女将を一泊のゴルフ旅行に誘い、身体の関係を持ちかけ、融資を盾に別日に身体の関係となると、端から金目当ての女はさっさと支店長を捨てて逃げてしまう。

実はその間、支店長の妻は睡眠薬を過剰摂取し、自殺未遂となったのだった。

それを契機に支店長の「寒流」は始まる。

流れがドンドン悪くなるドツボ。

女を盗られただけでなく、池袋支店から宇都宮支店に支店長として飛ばされるという屈辱的な人事異動を余儀なくされ、社内の誰もが支店長を相手にしなくなる。

彼は最早社内でも「寒流」なのだ。

そこで秘密探偵を雇い、彼らの不倫現場を写真に収め、筆頭株主に手渡し、株主総会に持ち込もうとする。しかし、詰めが甘く、写真の日は別の用事をしていたとか、顔が鮮明ではなく、自分ではないと言い逃れられ、支店長は敗北する。

それだけでなく、東京からヤクザを送り込み、脅迫する。

支店長は常務取締役が女将と情事を行っている店から常務取締役の車を盗み出し、同じ車種の車を置いておき、盗難車と偽って警察に立件させる。

そして、重役に女将との仲と女将への6000万円もの不正融資をネタに、警察への立件を証拠に突きつけたのである。

しかし、融資は担保となるものが正当な価値である場合には違法とは言えず、彼の言う不正な融資は立憲不可能なものであった。女将との関係は別段咎められず、常務取締役は不問。支店長は重役から大目玉を食らい、事実上の失脚となったのである。

支店長は最後、荒野をただ闇雲に歩いていく。家族も仕事も失い、彼にはもう何もないのだ。
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