みっちゃん

ダンス・ウィズ・ウルブズのみっちゃんのレビュー・感想・評価

ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990年製作の映画)
4.0
どうしてこの映画を観ていなかったかというと、たぶんネイティブ・アメリカンが白人に滅ぼされるのを観たくなかったからだと思う。

大河ドラマもそうだけれど、歴史ものは、戦争、戦争、また戦争、そして滅びの物語になるのがわかっているから、観始めるのにとてもエネルギーがいる。
しかし、いったん観出すと止められなくなる。

残酷で悲しくて苦しいけれど、良い映画だった。
この作品を撮ったケヴィン・コスナーの心意気が好ましい。
原作があるから、事実ではない。
しかし白人の中にも、主人公のように、ネイティブ・アメリカンに心を寄せた人物がいたかもしれないと思いたい。
あの不思議な狼の存在も効いていた、だからこその「ダンス・ウィズ・ウルブズ」。

まったく言葉が通じない状況から、徐々に心を通わせてゆき、友情や恋に高まっていくのを見るのは、心地よかった。
お互いを理解しようとするからこそ。
ラスト近くの、友情の雄叫びに泣けた。

この話は、日本ではアイヌの人々や、歴史上の蝦夷のことを思わせる。
国ができあがったときに、その周辺にはまださまざまな先住民族がいて、だいたい国の側は先住民族を蔑視し、彼らを隷属させたり、彼らの土地を奪ったり、無理やり同化させたりする。
先住民族というのはだいたい、多くの部族に分かれていて一枚岩ではなく、ある部族は生き残るために国(征服者)におもねり、ある部族は戦うのだが、結局、巨大な国に滅ぼされてしまう。
この映画でも、残忍な部族が登場し、そっちの部族のほうがアメリカ軍と通じていたりする。
部族どうしが、衣食住の糧となるバッファローや土地をめぐって争うシーンも描かれていて、どちらが、何が正しいのか。
国って何だろう。
そんなどうしようもないことを考えてしまう。

今、差別問題の騒ぎが欧米を覆っていて、新大陸に到達したコロンブスをはじめとし、植民地政策や奴隷貿易を推し進めた人物たちの像が引き倒されているらしいけれど、ようやく気づいたのか、何を今さらという気もする。

この映画を観たことは、タイムリーだったのかな。
南北戦争のころの話で、主人公は北軍の兵士だけれど、ネイティブ・アメリカンからすれば南軍も北軍も関係ないだろう。
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