a7III

プリンセスと魔法のキスのa7IIIのネタバレレビュー・内容・結末

プリンセスと魔法のキス(2009年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

舞台がルイジアナ州のニューオリンズで、主人公はアフリカ系アメリカ人のティアナという女性。
19歳(!!)で将来、自分でレストランを開くために仕事を掛け持ちしながらお金を貯めている立派な人でとても頭が下がります。
時代設定は1920年代ということで、まだまだアメリカ国内での人種差別が普通にあった時代で、この映画ではそういった描写は少ないもののティアナは被差別民であり女性であるため、自立してましてや自分のお店を開くというのは非常に困難であったと思います。
そんな彼女がマルドニアという架空の国から来て諸々の事情でカエルにされてしまったナヴィーン王子に「キスをしてくれれば人間に戻れるんだ」と言われ仕方なくキスしてあげたところ、ティアナもカエルになってしまって大変!というところから話が始まるわけです。

つまりこの映画の半分くらいはカエル2匹(と僕が大好きなルイスというワニとレイというホタル)が冒険したり料理したりちょっとずつ仲良くなったり失恋して泣いたりと、なんだか何を観てるんだか分からなくなってきてしまいそうになりました。
ティアナはとてもキュートで魅力的なキャラなのでずっと人間のままで良かったのにな~と思ってしまいますが、やはり外見に囚われないようにすることでより普遍的な話にしたかったのかなと。
ディズニープリンセスで始めてのアフリカ系アメリカ人の女性にした(白人ではないアメリカ人という事が重要)という事は当時とてもチャレンジングな事だったと思うし、観客のバイアスを和らげる対策としての意味も大きかったと感じます。(ここら辺の事をどう書くか悩みました。)

また、ティアナ以前の主人公は受動的な存在でもなく外の世界を夢見る少女でもなく自己実存に悩む子でもない、目標を目指して努力する積極的で自立した女性で、より現実的で大人なキャラクターとして描かれている事も過去の作品よりも更にアップデートをしようという姿勢で本当に気合いが入った作品でした。

また魅力的なキャラクターが多くて、例えばヴィランのファシリエはブードゥーの呪術と巧みな話術とパフォーマンスで困り人を誘惑するキャラクターで、その技術を見ているだけでとても惹かれるし言葉を巧みに操り、甘い話をしてくる人間には本当に気をつけようと思わされます。
トランペットを吹くワニのルイスは他作品でいうジーニーやムーシューのような立ち位置のキャラでとにかく動きも喋りも可愛い図体のデカいワニで観ている間はずっと僕がニコニコでしたしあんなワニが船上に上がってきたらそりゃ銃打つよ。
ホタルのレイは、最初出てきた時はメーターみたいな田舎っぺの面白おとぼけキャラかな~と思ってたら誰よりも男前でロマンチストで、夜空に輝く星をエヴァンジェリーンと名付けて自分と同じホタルだと思って恋している素敵なキャラ。
彼のティアナ達への思いやりの行動は本当に皆が見習うべきものだし仲間のために出来ることがあれば自分を捨てでも何でもするという心意気が、観客の我々にも響くしティアナやナヴィーンにも影響を与えたと思います。
ママ·オーディみたいなお婆ちゃんキャラに結構僕は弱くて本当に大好きです。
気をつかってくれてる蛇のジュジュもキュートでとても良いコンビだし、ああいうお婆ちゃん欲しかったなぁ…
そしてティアナの親友、シャーロット!
ただの金持ちのわがまま娘かなと思ってたら、ティアナのために普通にドレス貸してくれるし、ナヴィーンとの話を聞いてすぐ協力してくれるしで、良い子だったなと。
ただ、童話に憧れて「王子」と結婚したがったり「いつも欲しいものが手に入らない」と言ったりと、ティアナの立場から見た時にどうなんだろうという感じで、物語を通して「欲しいもの」ではなく「必要なもの」を見つける事が大切だと知ったティアナと比べるとやはり色々考えてしまうキャラクターです。
それに彼女は白人で(名前からしてフランスからの移民の子かな?)あの時代に黒人のティアナとあんなに懇意なのはファンタジー過ぎないかなと感じます。
だからと言って嫌いになるわけでもないですが、やはりそういった時代を描くいじょうはそういう要素は重要だしどう描くかで作品や歴史、差別自体への向き合い方が誠実なのかどうか変わってきてしまうので、僕はこの作品はとても素晴らしくて好きなのですが、一方でしっかり考えなければいけない事があると思います。

そして、もっとティアナ(含めポカホンタスやムーラン、モアナ、特にミラベル!!)がもっと日の目を浴びて商品がたくさん出てほしいなと願っています。
a7III

a7III