ウシュアイア

ウィンターズ・ボーンのウシュアイアのレビュー・感想・評価

ウィンターズ・ボーン(2010年製作の映画)
3.5
[あらすじ]
アメリカ中西部ミズーリ州の荒涼とした山岳地帯に暮らす17歳のリーは、失踪した父と精神病の母に代わって弟と妹の世話をしながらギリギリの生活をしていた。

そんなある日、保安官がリーの元をおとずれ、リーの父は麻薬密造の罪で捕まった際に、家を担保に保釈金を払っているために、1週間後に開かれる裁判に姿を現わさなければ、家が人手に渡ってしまうという。

家族を守るため、17歳のリーは父が関わっていた闇社会の人々と接触し、父の行方を捜すのであった。

[感想]
以前に観た『フローズン・リバー』同様に、経済大国アメリカの知られざる闇を描いた作品、と銘打ってしまうと、何だかこの作品のようなことが現実にあるように思えてしまうのだが、実際のところは不明。とにかく、広大なアメリカで、外国人がほとんど足を踏み入れないような地域には広大でのどかな田園だけでなく、知られざる闇が広がっているようだ。

リーが足を踏み入れた闇の組織も、保安官も含めて町ぐるみと思わせる。この無法ぶりというかローカルルールだらけの町のイメージは西部開拓時代を思わせ、ただ西部開拓時代との違いは馬の代わりが車というあたりだろうか。

アメリカっぽいといえばアメリカっぽい。

リーが車を借りに訪れた友人は、もうすでに子どもがいるような状態で、リーの置かれた境遇が社会全体に広がっていることをうかがわせる。また、リー自身が幼い弟と妹に食用のリスの撃ち方、そして内臓の処理の仕方を厳しく教えるこむシーンもあり、これもまた衝撃的である。

その一方で、リーたちの境遇を慮って、隣に住むおばさんは何かと気にかけてくれ、シチューの材料を届けてくれたり、薪をを切るチェーンソーを貸してくれたりと、厳しい自然環境に置かれた人々の連帯意識も残っているということも見て取れる。

そして、家族を支えるために軍に入ろうとするリーを軍の面接官が諭すなど、過酷な環境にありながらも、やはり最後は人々の人情であることをうかがわせる。

そして、小出しだったグロテスクさも、次第にエスカレートしていき、衝撃の結末を迎える。本作は心臓の弱い人にはあまり勧められない。この作品の背景などを振り返ってみると、観終わった直後と今では評価が変わってくる味わい深い作品であった。
(2011年11月23日)
ウシュアイア

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