こたつむり

ウィンターズ・ボーンのこたつむりのレビュー・感想・評価

ウィンターズ・ボーン(2010年製作の映画)
3.7
★ 無骨な枯れ木 薄墨の太陽
  その世界はあまりにも過酷で終わらない

とても寒々しい作品でした。
あまりにも冷え冷えとしているので呼吸困難に陥りそうなほど。暖かい部屋で観ている筈なのに、手足はじんと痺れ、頭の奥が鈍器で抉られるような感覚。

だから、痛くて、辛くて。
空は見上げても乳白色。
樹々は細さを競うほどに震えて。
びゅんびゅんと吹きすさぶ風が部屋の隙間から入ってきて背筋を切り裂いていくよう。

物語の形としてはいたって単純。
保釈された父親の足跡を辿るドラマ。
その父親が裁判所に出頭しないと保釈金代わりの“家と森”を失うため、主人公の形相は鬼気迫り、ひたすらに圧倒されて、ひたすらに絶句。

主演はジェニファー・ローレンス。
見事なまでの存在感。
過酷な状況に立ち向かう“凛とした眼差し”が色を失った世界でひときわ映え、一本の筋が通り、流れていくのは赤色の液体。そして鼓動。

また、大海に落ちた一滴の優しさも。
乾燥した人間関係だからこそ、貴重な縁となって頼りたくなる始末。ゆえに正論を淡々と述べる軍人は最高に萌える存在。現実と現実。その境界線で揺らぐ想い。

まあ、そんなわけで。
「貧困」という熟語で流したくないほどに過酷な物語。手にするものが無いからこそ、肩にもたれる“温もり”が愛しいわけで、祈るのは安寧。ただそれだけ。

…最後に余談として。
鑑賞後に本作がアメリカの一地方に住む《ヒルビリー》と呼ばれる人々を描いたものだと知りました。超大国として世界に君臨するアメリカですが、このような側面もあるのですね。その事実に驚きです。

また、鑑賞前の注意点として。
リスが好きな人、あるいはリスを飼っている人は“覚悟”が必要です。町田リス園に喜び勇んで訪れるような人は鑑賞を控えた方が良いかもしれません。