たちくるみ

穴のたちくるみのレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
5.0

衝撃を受けた作品。

ジャック・ベッケル監督の遺作であり、
実際に起こったサンテ刑務所脱獄計画を描いた作品でもあります。

とにかくよく出来ている。
『実話ほど優れた物語はない』という言葉がよく当てはまる作品だと僕は思います。

この作品以降の脱獄映画はとにかくハラハラドキドキを盛大に繰り返して視聴者を引き込んでいきますがこの作品はそうではなく、静かにそっと観ている人の心に棲み付いてくるようなスリルと衝撃を与えてきます。

その手法のひとつとして登場人物の個性の掘り下げが秀逸。
5人それぞれにきちんと色があってそれが絶妙に観ていられる関係性なのです。
刑務所に入ったことは無いので分かりませんがとても厚い信頼関係と絆が見えて自分もその号の囚人の一人のように感じてくるような没入感を受けました。

あとは脱獄までのプロセス。
静かに順調に進んでいく計画は観ていて「これいつ次の展開来る?」と予想せずにはいられない上手さがあります。
また寡黙で味のある俳優たちの名演技が素晴らしいので日常のなんてことない食事や箱を作っているだけシーンも観てられます。

そしてラスト。
これはぜひ観て頂きたい。
一気に深さを増していきます。
人間の欲望、信頼関係など非常に深層に訴えかけてくるものがありました。

僕にとって非常に大切な作品になりました。
長々と読んで下さりありがとうございます。
たちくるみ

たちくるみ