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赤い殺意のRのレビュー・感想・評価

赤い殺意(1964年製作の映画)
4.8
いやー、おもしろかった! 長い映画やけどぜんぜん長く感じなかった! ただ、人にオススメしやすいかと言われると、いやー、まぁ見なくてええんちゃう?ってなりますわ。訛り強すぎ、癖強すぎ、濃厚すぎ、醜すぎ、人によっては具合悪くなりそう。けど、それだけパワフルな映画であるのは間違いない。絶対に現代日本では作り得ないタイプの映画。えっと、ストーリー自体はそんなにややこしくないんですが、昔の日本映画特有の日本語の聞き取りにくさに加えて、(タブン)東北訛り、僕のリスニング力の低さ、などでディテールがぜんっぜん聴き取れない! 田舎の婆さん同士がヒソヒソ噂話してるのが劇中しばしば聞こえて来るんやけど、ひと言も聴き取れない。参りましたこれには。まぁまとめていくと、主人公の貞子は、吏一(リイチ)という図書館勤務のかなりキモいおっさんの妻で、吏一にも吏一の母にもこき使われて、ほとんど女中のような扱い。彼らには勝(マサル)という息子がいて、この子だけがかわいくて、貞子の生き甲斐。けど、息子についても姑になんやかや口出しされる。なにもかも、言われるがまま、自分なんて無いもののようにして生きている貞子は、ある日、夫が出張で留守の間に、強盗に押し入られ、強姦されてしまう。死のうとしても死にきれず、夫に言おうとしても言い出せない。貞子のもとに、再び、強盗は戻ってくる。好きなんだよ、オレ、お前のことが好きなんだ、オレ、死ぬんだよ、と言いながら、男は貞子を犯す。そして、いやいやながら、なんだかんだで平岡というこの強盗に感情移入していってしまう……一方、そんなことが起こってるとは露知らずの吏一は、同僚の義子と長年不倫関係にあるのだが、この義子が目撃してしまうのです、貞子が平岡と一緒にいるところを……という流れ。何もかもが強烈なインパクトを持っている本作だが、いちばんスゴいのは映像ですかね! どのショットも光と闇のコントラストがめちゃくちゃカッコイイ!!! 痺れました! 特に最初のレイプシーン、夢のなかで太ももに這わせていた芋虫を握り潰し、内臓がぶりっと出て来るショット、その後、夜中に目覚めた貞子のつぶやく「死なねば……」からの入浴、二度目レイプシーンのアイロン、などなど、印象的な映像の連発。美しいシーンも多く、雪の舞い散る町のなか路面電車が停車するショットの詩情レベルは感動的。で、それぞれの映像の強度を圧倒的に高めているのが、主演、春川ますみのビジュアルインパクト! まるまる肥えた体を申し訳なさそうに縮こませ、すべてを諦めきった力ない表情の、決して美しいとは言えない貞子だが、従順さ故か同情からか、だんだん魅力的に見えてくる。不思議。なんでこんなに不幸せなんだろ、あたす、って心で呟いてるのが、不憫で不憫で不憫すぎて、けど、訛りがおもしろくてついぷっとふきだしてしまう。愛嬌がイイ。ほんで夫がまたクソほどろくでもない男で、義子とでも貞子とでもセックスする姿が気持ち悪すぎる。よくもまぁこんなに見下げ果てた男をこんななりふりかまわず演じたものだ。こんな役演じたら、今後の役者キャリアやばそう。こんな人にしか見えなくなりそう。西村晃という人だそう。反対に、貞子をレイプする平岡を演じる露口茂は、とんでもない暴行をはたらく人物を演じているが、この人はどこか憎めない、同情を誘う雰囲気があり、レイピストではあるが、吏一のような下衆と最悪の人生を送るよりは、平岡に愛されて生きた方がまだマシかもしれない、と説得力を持たせることに成功している。で、ストーリーはもうどんどん救いようがない方向に進んでいって、胸が痛くてしょうがない、と思ってると、突然、衝撃的すぎて何度も早戻しして見てしまうトラックシーン。そこから不思議なくらいムードが変わり、思いがけないエンディングに到達! いやはや、強烈な映画でした。非常に強烈でした。最後に、こないだ見た獣人というフランス映画もふと思い出させたのが、性欲のドライブを列車で表現してるとこ。輝く車体と、水蒸気を発しながら力強く前進する姿を、エロスと重ねるの、わかるよーな、わからないよーな、けどおもしろかった! 退屈なセックスよりは列車みたいな勢いがあるほうがいいのかな? どうですか? みなさん。長くて苦しい映画だけど、不思議とまたいつか見てみたいかも、と思ってしまっている。ひどいひどい内容だけど文句なしの傑作であります。最終的にはおオススメです!
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