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戦後最大の賭場のakrutmのレビュー・感想・評価

戦後最大の賭場(1969年製作の映画)
4.0
CSで放送していたので何気なく見ているうちに、引き込まれて最後まで見てしまった映画。暴力団による全国的な政治結社の理事選をめぐる関西2団体の攻防を背景に、異なる会派に属しているが義兄弟の契りを結んでいる二人の組長の義理人情を描いている。この当時の東映のスター俳優である鶴田浩二と高倉健が義兄弟を演じており、特に、理事選で対立している自分の所属する会派の会長と義兄弟の狭間で葛藤する組長役の鶴田浩二の演技が見どころ。さすが大スターの貫禄十分である。

任侠・ヤクザ映画自体は好きではないが、この映画で描かれていることはヤクザ社会に特有なことではなく、例えば『白い巨塔』のように、ある地位をめぐって争うというどの世界でも見られる普遍的な内容であることと、鶴田浩二と高倉健の演技のおかげで楽しんで見ることができた。この頃の高倉健の目力は何とも形容しがたい凄みがある。ヤクザしか演じられないことに危機感を持った高倉健が東映から独立した後の演技とは明らかに違うことを考えると、目だけで演技できる彼の凄さが再認識できる。

ちなみに、他のレビューでも書かれているように、タイトルは内容を表していません。賭場のシーンは最初と最後に出てきますが、博打は全く本筋ではありません。理事選の始まりと終わりを象徴するシーンとして賭場が使われているという意味でのタイトルなのかもしれないけど。
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