さく

ブラックブックのさくのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
5.0
ニワカなので宇多丸師匠の「歴史に残る名作。全人類必見」との評を受けて、さっそくNetflixで観ましたよ。もう仰る通りとしか言いようがない名作です。新作の『ELLE』にも通ずる、「女性の強さ」を描いた作品なのですが、もはや女性がどうこうではなくて、「人間の強さ」です。

しかしまあ、普段から偉そうに「単純な勧善懲悪なんてクソ」みたいな評ばかり書いておりますが、「罪深い人間の多様性を描きつつ、ストーリーを構築する」(かつ面白くする)というのは、相当難しいと思うんですよね。それが複数人の多面性みたいなのを描くと尚更…

ここから多少ネタバレも含みます。

映画でも小説でも何でも、基本的にナチスドイツは「悪の象徴」として扱われるのは常識と言っていいほど「当たり前」なのですけれど、本作はそうはいかない。ナチスの中にも善人は居るし、レジスタンスの中にも…。

また、大抵、「歌がうまい」とか「楽器がうまい」なんて人は「心が綺麗」とされて、物語においてそういう扱いを受けるのが常ですけど、これまた本作では…。とことん、私達の持っている物語に対する固定概念みたいなのをぶち壊しにくるのがバーホーベン監督の凄さだと思います。『ELLE』もそうでしたけど。

「無駄におっぱい出しすぎ!」みたいな意見もあるようですけれど、これはちっとも無駄じゃないですからね。バーホーベンがただおっぱい好きなわけではないですよ(そうかもしれないけれど)。これは、生き残るためにエリスが決めた覚悟の象徴なんです。本来は、「恥ずかしい」と隠すべきものを、堂々と「何度も」曝け出す。ここに彼女の覚悟と強さが表されているんです。ただのおっぱい好きの変態オヤジ監督ではないんです(多分)。
さく

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