ぬーたん

ブラックブックのぬーたんのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.5
面白い!予備知識なしで鑑賞すべき作品。
ナチス占領下のオランダが舞台。
歴史に基づく時代背景に乗せたフィクションドラマ。
製作はオランダ。監督はポール・バーホーベン。
御年80歳になる監督の2006年作品、70歳近い作品ね。
かつて『トータル・リコール』『氷の微笑』を撮った監督で、それほど期待せずに観たけど…。
これはめっちゃ良かった!
144分という長さが短く感じられたほど前のめりで観たわ。
最近多い、ナチスものかあ?でも12年も前の作品だから描き方も違うかな?と思いつつ観たら、これはひと味違っていた。
ナチス=悪者という図式はノンフィクションでは当たり前だが、これはフィクションで思い切ったナチスの善人の姿も描いている。
もちろん狡くてスケベな太ったハゲかけの中尉は憎たらしくて、いつ天罰が下るか楽しみに観るわけで。
逆にレジスタンスの方にスパイやワルが居る可能性もあるわけで…。
そんな、ハラハラのサスペンスとヒューマンドラマ、愛の行方を存分に楽しめた。

レジスタンスに入りドイツ軍部に潜り込むユダヤ女性ラヘル(エリス)をカリス・フォン・ハウテン。
オランダ人である。どこかで観たなあと思ったら、『ゲーム・オブ・スローンズ』のメリサンドル!魔法使いの怪しい女。
普段、画面に集中したいためこの作品は吹替えで観てるから声では気が付かなかった。
そして、最初は地味で化粧気もない容姿で登場するし。
何度も細く美しい裸体で登場する。『ゲーム~』でもよく脱いでいるが(笑)今作の方が若いせいかずっと綺麗。
ゲームの方は身体もふっくらで胸がやや垂れていたなあ💦そんなとこばかり見てるんかーぃ(-_-;)
金髪にしてドレスを着てからは美しく輝いている。その変わりよう、女って恐ろしいわねぇ。
体当たり演技が良かったものの、あまりにも残酷な人生に、あぁ苦しい想い。
最初に現在の平凡で穏やかな暮らし、結婚してるという情報を出してから過去に戻るので、まだ耐えられるけど。
保険を掛けた的な、その辺りは上手い。
彼女は私生活ではガイ・ピアースとパートナー。
彼女と付き合うナチス親衛隊大尉のムンツェをセバスチャン・コッホ。
ドイツ人。『ホームランド』で知った俳優だが、ロジャー・ムーアやアントニオ・バンデラスに似たキリリとしたイケメンオジサマ。
ゆったりとして穏やかな優し気な雰囲気を持ち、SSとは思えないタイプ。
実際、ちょっと違うが。
何が良いって、この作品、低予算というわけではないだろうが、CGを使っていない。
ナチスを描くに必須な残酷なグロい映像も少なく、レジスタンスとナチスを描いているというのに、どこかのどかな雰囲気さえ感じる。
多分、過激なハリウッド映画と違う、ヨーロッパの街の風景や言葉や俳優たちの持つ雰囲気がそう思わせるのかも?
レジスタンスを応援するが、なかなか上手くはいかないし、もう泣けて来るよ。
勧善懲悪スッキリな展開でもないし、悪もアッチコッチに居るし、何を信じ誰を信じ、何をすべきなのかをヒロインと一緒になって考え進んでいくような気持ちになった。
細かな点では粗く、突っ込みたくなるようなこともあるが、そんなことはちっぽけなこと。と思わせる大胆で丁寧で想いのこもった作品になっている。
素晴らしい!
ぬーたん

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