ココアみたいな名前の巨匠ポール・バーホーベンが母国オランダに堂々凱旋。構想20年、蘭史上最大の製作費を投じられた情け容赦無しの戦争映画。
【こんな人にオススメ】
・大河ドラマを160分で観たい
・戦争映画はアクションとかじゃない
・陰毛をブリーチして酷い目に遭った
【あらすじ】
ナチスドイツ占領下のオランダ。何者かの罠で家族を皆殺しにされたユダヤ人女性ラヘルは、スパイとして復讐を誓いナチス幹部のムンツェ大尉に接近する。
前半、ヒロインがとにかく気丈である。隠れ家を爆破された直後にも関わらず陽気に歌を唄ったりする姿に違和感を覚えたが、高橋ヨシキ氏の解説で納得した。
「泣きわめいたところで状況が好転しないことを知っているから」
この時代、泣きわめくやつは真っ先に命を落とすかんな!
平和ボケした我々はお涙頂戴のメロドラマに慣れてしまっているが、本当に悲惨な状況にいる人の反応は案外こんな感じなのかもしれない。
しかし、レジスタンスの攻防を描いた前半の2時間は壮大な前振りでしかなく、主人公にとっての終わりなき苦しみはむしろ終戦後に始まるのだから本作は恐ろしい。
(この辺が大河っぽい)
戦時中ナチスに協力していた同胞を「売国奴」として迫害するオランダ人。
「英雄」と讃えられたレジスタンスの知られざる暗部。
オランダ人には直視し難いだろう光景をオランダ人監督が描くあたりも容赦ない。
戦争とは本来、アクション映画のように勧善懲悪で語れるものではない。
とはいえクソ野郎にはふさわしいオチを用意することで、観客が求める最低限のエンタメ性も担保しているため、後味はそこまで悪くない。伏線回収も丁寧。
久しぶりに骨太な映画観たなーという気になれる渾身の一作。