佐藤でした

ある愛の風景の佐藤でしたのレビュー・感想・評価

ある愛の風景(2004年製作の映画)
4.0
ミハエルがアフガニスタンに派遣されるその日、弟のヤニックは出所してきた。妻と二人の娘と共に幸せな生活を送り、両親の自慢の息子でもあるミハエルに対し、服役までした不出来な弟ヤニックは家族の中で孤立していた。
その後もトラブルばかり起こしていたヤニックだったが、兄家族に心を開くようになり、犬猿の仲だった両親とも仲を取り戻していった。
そんなある日、一度戦死したと言われた兄ミハエルが帰ってくる。元気そうに見えたが態度や言動は別人のようになっており‥。


出所した朝。運転する兄のふとした言葉にキレた弟は、助手席からサイドブレーキを勝手に引き、車は白煙を上げて急停止する。

このシークエンスだけでも色んな情報が詰まっていた。優しくて気が利くが、恩着せがましい兄。キレやすくて甘えん坊の弟。穏和の中にも緊張感のある画作り。スサンネ・ビア監督の怒りの表現がおもしろい。

今作を基にハリウッドが焼き直したリメイク版「マイ・ブラザー」に比べて、要となる弟のダメっぷりがよかった。さすが本家。吐きそうになるまで酔っ払ってるふてぶてしさとか。ダメであればダメであるほど愛着が湧く。

不思議なものでマイナスのところにいる弟は、どんな小さな良いことをしてもプラスになる。花を買っただけでも、銀行口座を開いただけでも。ちゃんとしている兄は、そうはいかない。

戦地で誰にも言えない傷を負ったミハエルが、不在の間にリフォームして綺麗になったキッチンで暴れるシーンは悲しかった。全く本意ではないのに、妻や弟に暴力を振るい、娘たちを怯えさせる。かわいそうで見ていられなかった。

ラストシーンの夫婦の会話が印象に残る。病めるときも健やかなるときも、互いのズレをさり気なくなだらかにしながら、並んで歩んでいくのが家族というものなのだろう。