こたつむり

バットマン リターンズのこたつむりのレビュー・感想・評価

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
2.7
ネコVSペンギンVSコウモリ。

ティム・バートン版『バットマン』の続編。
つまり、前作は続編が期待されるほどに成功したのですね。確かに調べてみると、3500万ドルの製作費に対して、興行収入は4億1100万ドル。なんと倍率11.7倍。こりゃあ、篠沢教授に賭けている場合じゃあないですよ(ってネタが古いなあ)。

だから、潤沢な予算が用意されるのも当然の話。見事なまでに豪華絢爛な作品に仕上がっている…はずなのですが、何故でしょうか。全般的にチープな雰囲気が漂っているのです。正直なところ、ゴッサムシティーの雰囲気は前作の方が格好良かったですし、エキストラの数も減っている気がしました。

そして、何よりも。
本作の敵である《ペンギン》と《キャットウーマン》では、前作の《ジョーカー》の存在感に敵わないのです。それをティム・バートン監督も承知だったのか、この二人の背景に力を入れていました。不遇の出生、叶わぬ安寧、内に秘めた暴力性と狂気。哀しみを背負ったキャラクタとしては見事な造形だったと思います。

ただ、敵キャラクタが二人になったことで。
世界観は広がっても、物語が冗長で散漫になってしまいました。

また“闇”を活かすのは適度なコミカルさ。
前作ではジャック・ニコルソンの演技に懸かっていましたが、本作ではそれを脚本でカバーしていました。例えば、生魚をいきなり喰らいだし、口から黒い液体をゴボゴボと流している《ペンギン》が“市長”を目指す展開とかですね。

でも、このコミカルさが行き過ぎると。
カフェオレではなく“コーヒー牛乳”のようになってしまうのです。だから、クライマックスでペンギンたちのよちよち歩きを見せられても、盛り上がるどころか口角が上がるだけ。緊張感の欠片も無いのです。

まあ、そんなわけで。
素材は良かったと思いますが「映画を魅力的に彩るのは“プラスアルファ”なのだな」と再認識した次第。本作の上映時間は126分ですが、せめて110分程度にシェイプアップしていれば…また違った印象だったと思います。

それにしても。
ひたすらにキャラクタが落ちる作品でした。
まるで高所から落ちることが“通過儀礼”であるかのよう。そう考えると本作の真の主人公は、複数回落ちている《セリーナ》なのでしょう。彼女の場面はどこも良かったと思います。みゃーお。

To be continued… →→→ 『バットマン フォーエヴァー』
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