とらキチ

2001年宇宙の旅 新世紀特別版のとらキチのレビュー・感想・評価

4.5
「午前十時の映画祭11」にて鑑賞。
人類の過去から未来、その先を描いた壮大なる叙事詩。
今クールのテーマが「キューブリックはやっぱり天才」。その天才たるところを存分に見せつけ、後世の映画史に計り知れない影響を与えたSF映画の金字塔。
人類が月に降り立つより前に製作、公開されていただなんて!
もし、公開当時に劇場で鑑賞していたら、寝るか怒るかのどちらかだったろうなぁと思う(笑)。“木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)”なんて初見で理解しようなんて不可能。現在これだけ考察記事、コラムが溢れているから何とか太刀打ちできるけど…。やっぱりアーサー・C・クラークの「幼年期の終り」の“オーバーロード”の概念が参考になるのでしょうか。
セリフの少なさも印象的。作品の総尺に対してのセリフ台本の枚数の少なさのギャップは世界一なのではないだろうか。それでも少なくとも“木星使節(JUPITER MISSION)”までは、内容をそれなりに理解させてしまうのだから、やっぱり天才。
真空中だから無音とか、呼吸音のみとか、不協和音に美しいクラシック、劇伴の使い方も天才。もちろんシンメトリーも。更には空気遠近法技術の究極を駆使した美しいマット・アート。
先日無事帰還した、野口聡一さんの着ていた「クルードラゴン」の宇宙服、特にヘルメットのデザインが今作に登場するものと似ているなぁと感じたのは、デザイナーが今作をリスペクトしていたからでしょうか(MCU映画やDCEU映画の衣装を担当してきたデザイナー、ホセ・フェルナンデス氏がデザインメンバーに入っている)。
地球から宇宙ステーションまでのスペースプレーンを“パンナム(Pan Am)”が運行していたり(ロシアのアエロフロートも運行に参画している事も解る)、その宇宙ステーションのラウンジが“Hilton”だったりと、現代(パンナムは倒産、消滅してしまったが)の我々の環境、社会から地続きだとわかる演出もニクい。
球状の機体にマニピュレーターの付いた船外活動カプセル“スペースポッド”。アレもモロにガンダムに登場する兵器“ボール”の元ネタですね。
真剣に劇場で映画を観るようになって、7、8年くらいになりますが、インターミッションで本当に休憩になったのは、初めての体験でした。
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