ちろる

ラスト、コーションのちろるのレビュー・感想・評価

ラスト、コーション(2007年製作の映画)
4.5
じわじわと、密やかな恋が育まれ、幸せの絶頂に永遠の別れが訪れる。

しかし相手は決して愛してはいけない相手。
仲間は彼の命をら狙う事に躍起になっているのに、一度開花した欲望の泉は湧き続けて互いに互いの身体がしっくりと来るのに気がつきながら思想と自分自身のどちらが大切なのか揺さぶられる。

性に溺れているのか、それとも性をむさぶり合うことで課せられた工作員としての任務から目を逸らそうとしているのか。

自分は罠にかけているだけだ、私は忠誠心をなくさないと固い心を持っているのに少しだけ流れたあの人の涙に心が突き動かされてしまう。
人間とは脆いのだ。
思想を貫けない、愛の存在。
逃げ場はもうなくて、世界から孤立したままの、消化不良の深いチアチーの愛が最後に美しく暗闇に咲き誇ったラスト、残酷だけど驚くほど美しくもあった。

当時新人女優だったタン ウェイは美しく、その衝撃の濡場シーンは想像以上で驚いたが、同時にセックスシーンが長いことに意味があると理解できた数少ない作品の1つでもあった。
素晴らしい体当たりの演技を見せながら保守的な中国においてこの濡場は批判もあり、その後、第一線になれたはずの女優人生が少し失速してしまったのだという。
こちらも、チアチーの人生と同じく切ない限り。
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