ひでやん

姿三四郎のひでやんのレビュー・感想・評価

姿三四郎(1943年製作の映画)
3.4
柔術家を目指して田舎から上京してきた青年が、師匠と出会い、成長していく姿を描く。黒澤明の監督デビュー作。

柔術から柔道へ転向し、修道館の矢野に弟子入りした三四郎は、卑劣な闇討ちをした門馬との因縁の対決や、美しい娘、小夜の父と対決。

強敵と闘う三四郎だが、その対決は迫力がない。必殺技「山嵐」を門馬に決める場面は、技の凄さを強調する大袈裟な演出で、ありえない威力。

白熱した死闘に対して失笑…。

残念なのは演出ではなく、そう感じた自分である。CG技術を駆使した映像が溢れている現代、それらを鑑賞している自分は随分贅沢な「目」になっている。

太平洋戦争真っ只中に制作され、1943年に公開。当時の時代を想像し、心をタイム・スリップしてみる。

戦時下の大衆は娯楽に飢えていた。スクリーンに映し出されるのは、たった一人で門馬一派を倒す矢野の姿。その圧倒的な強さに人々は魅了されただろう。

庭の池に飛び込んだ三四郎が、美しく咲く蓮の花を見て、己の未熟さを思い知る場面が脳裏に焼き付いただろう。

立ちはだかる強敵と闘う三四郎を、手に汗握りながら応援し、相手を投げ飛ばす大技に「出た!伝家の宝刀」と声をあげて歓喜したことだろう。

姿三四郎という勇敢な男は、暗闇に灯火をともすヒーローのように、人々を魅了したに違いない。
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