けんたろう

姿三四郎のけんたろうのレビュー・感想・評価

姿三四郎(1943年製作の映画)
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会津から上京してきた、小宮と相田のおはなし。


映画を観るに、この頃の柔道は相手を放り投げる形であったようだが、その形が恐ろしくてしようがなかった。
現代の柔道は、日本の武道の一つであるとはいえ、位置づけはスポーツの一つであろう。
それが今作では命の張り合いなのだ。受け身なんて笑止と言わんばかりに放り投げ、負けを認めなければさらに投げる。おっかない事この上ない。


だがそのアクロバットなアクションや間合いをとる柔道は、まるで刀のないチャンバラであり、後に世界を席巻する黒澤時代劇の片鱗をのぞかせる。

また、花にタバコの灰を落とす者と、花の美しさに気が付ける者の戦いは、先日観た『椿三十郎』にそっくりである。
目に見える物に加え、目に見えないものも黒澤明は初めから完成させていたのだ。

いやしかしこの美徳と言うべきなのか分からないが、彼が提示した強者の観念には惚れ惚れする。
教育の一環として、全国のちびっこ達にもぜひ観ていただきたいものだ。