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マローダーズ 襲撃者の鰹よろしのレビュー・感想・評価

マローダーズ 襲撃者(2016年製作の映画)
3.2
 自分たちは一切声を発することなく、事前に録音してあった音声のみで要求を通し、強引に且つスムーズに洗練された動きで銀行強盗を完遂していく犯人たち。

 対し、強盗犯たちが立ち去ってしばらく経ってからの通報を受け現場に到着したFBI捜査官たちは、彼らよりも先に到着していた市警察との折り合いが良くなく、対応が逐一おぼつかない。また偽の証拠に飛びついてしまった市警察のミスによりさらに後手後手に...

 緻密(機械的とも)な強盗犯たちと杜撰(実に人間的とも)な捜査官たちとの対比により、またその差を埋めるべく残された証拠に奔走し翻弄される姿により、またまた銀行強盗事件を捜査するに当たりそれぞれのポストのパイプ役に新人(超優秀なG.I.ジョー)を配置していることにより、事件の真相へと向けた導線が構築されており、その過程で浮き彫りとなっていく人間ドラマを軸にそれぞれの真実に迫っていく。

 妻を亡くしている(殺されている)FBIの主任捜査官。犯人は刑務所でノウノウと生きており、警察の人間でありながら正当な裁きを下せないことに憤りとやるせなさを覚えている。

 近いうちに別れが来ることが確実な末期のすい臓癌を患っている妻がいる市警察殺人課の刑事。治療費を稼ぐ意味もあるのか、彼の仕事は汚職に塗れている。そのことを妻は・・・

 軍を裏切ったとされ、また死亡したとされる事件の容疑者T・J・ジャクソンとその妻。犯人たちの動機。

 それぞれに抱えるモノがあり、譲れないモノがあり、償いのため正すべきモノがあるが故に掛け違いが生じ、またその掛け違い故に噛み合ってしまう(しまった)歪な関係は、鑑賞後よくよく考えてみればよく練られているなと感心するものの、それが鑑賞中事件の真相解明と同期して紐解かれていったかと言えば疑わしいものがある。難解というわけでは決してなく、どうにもとっつきにくく腑に落ちない面が大きいのである。

 それは、個々の設定と相関図に裏で固執するあまり、劇中の人間の動の部分が、彼ら自身の動機及び行動原理に起因し築かれる因果関係ではなく、強引に型にハメこまれ成立している相関関係になってしまっているからだろう。お話の起点のところで興味を削がれてしまうのだ。 

 でもなんだかんだ強引に話を魅せてしまう進めてしまうテンポ作りがうまいのがこの監督の強いところ。だらだらと観せられてしまうのにはマイッタマイッタ。


「カオス」(2005)...「インサイドマン」(2006)...「ロスト・ボディ」(2012)...「フレンチ・ラン」(2016)...「ライリー・ノース 復讐の女神」(2018)...
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