この作品の監督、スティーヴン・C・ミラーのものは初めて観たのだが、とにかく映像のキレがいい。冒頭の銀行強盗のシーン、犯人たちはハイテク機器も使い手際よく犯行に及ぶのだが、スローな映像や素早いカットバックなどを織り込んで、かなり小気味のいい襲撃シーンに仕上げている。金庫に押し入る前に、いきなり支店長射殺のシーンもあるのだが、これものちのちの伏線になるよう、印象深く設定されている。なかなか映像構成の上手い監督のようだ。
物語は、連続して起こる銀行強盗をめぐり、それを捜査するFBI捜査官を中心に、この犯行に絡むさまざまな人間の思惑と陰謀を描いていくクライムミステリーだが、かなり複雑に錯綜するストーリーにもかかわらず、監督のスティーヴン・C・ミラーは見事にそれらんさばいていく。なかなかの巧者とみた。
ブルース・ウィリスが連続して襲撃される銀行のオーナーを演じているが、彼が高層階にある自分の部屋からシンシナティの街を見下ろしながら、窓ガラスを這う蜘蛛にたとえ、自らの野望を語るシーンはなかなか素晴らしい。惜しむらくは、後半、彼の登場する場面が尻すぼみになっていくのがやや寂しい。
とはいえ、宣伝ではブルース・ウィリスの映画として、彼が前面にフィーチヤーされているのだが、物語全般を見渡すと、FBI捜査官モンゴメリーを演じるクリストファー・メローニのほうが、主人公として似つかわしいのではないかと思う。
連続銀行襲撃事件の裏には、過去に行われた軍の極秘作戦も絡み、死んだはずの軍人の指紋が現場に残されるという謎も用意される。
上映時間107分のなかに、ここまで複雑にする必要があるのかとも思うほどストーリーは詰め込まれているのだが、スピード感ある展開のなかに、きっちり収まっている。
連続銀行襲撃の真犯人も意外なところから現れるのだが、それも少しずつ怪しさを散りばめていき、ある程度は納得できる展開だ。
ラストのシーンに関しては、いろいろ突っ込みどころはあるだろうが、これは「おまけ」と考えるほかはない。ちょっと洒落たものにしたかったのだろう。
いずれにしても、このスティーヴン・C・ミラー監督、今後の注目株であることには間違いない、と見込んだ。これから、もう少しバジェットの大きなサスペンスアクションをチャレンジしてもらいたい。