菩薩

地の群れの菩薩のレビュー・感想・評価

地の群れ(1970年製作の映画)
4.5
「日本人なら」なんてフレーズが飛び出してくる度に「日本人」とは何かとの問いにぶち当たるが、自分が思う「日本人」の姿はまさにこれであるし、こう言う作品を気持ちよくスルーして行くのもまた「日本人」らしい姿ではないかと思う。何も寓話的では無くかつ過去の出来事としてくくるべくも無く、同じ様な差別構造がしかも同じ核を元にして生み出されてしまった事実を知らぬとは言わせないし、レイシズムやセカンドレイプに関しても同じ、歴史は繰り返すとの残酷過ぎる事実を痛感する。動物愛護精神に富む人はタイトルバックで停止ボタンを押すだろうし、そうでなくても途中途中挿入されるショッキングな「傷跡」に目を背けるだろうし、なんとかして最後まで見通す事が出来たとしても繰り返される惨劇に鑑賞自体を後悔するかもしれない。ただあれこそが「日本人」の姿だと思うし、豊かな生活を享受する一方で、もがき苦しむドブネズミ達を嘲笑うとの図式は、こんな世相だからこそより一層身近に感じられるのではないだろうか。北林谷栄vs宇野重吉の恐ろし過ぎる切り返しバトル、暗闇から石を投げ続ける匿名の攻撃性、陰惨な作中に咲く一輪の花こと紀比呂子、SASUKEの反り立つ壁の元ネタ、それを超える事が出来ても「日本人」が攻略すべきファイナルステージは遥か先にある。米軍機は今日も空を飛ぶ。
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