おなべ

レインマンのおなべのレビュー・感想・評価

レインマン(1988年製作の映画)
3.7
長く疎遠だった父親の死をきっかけに、突如として明かされる兄弟の関係。そして見つけた微かに残る愛の記憶。これは、数十年の月日を経て奇跡的に繋がった兄弟の愛を描いた物語。

第61回アカデミー賞では作品賞・脚本賞・監督賞・助演男優賞を受賞。第46回ゴールデングローブ賞・第39回ベルリン国際映画祭においても作品賞を受賞している。日本でも舞台化された。

中古車ディーラーを営んでいるチャーリーは父親の訃報を知り、財産目当てで故郷へ帰郷。そこで、サヴァン症候群という自閉症を抱えている肉親の兄、レイモンドの存在を知る。チャーリーは金目的で兄レイモンドを病院から連れ出すが、道中様々なトラブルに見舞われる。しかし、何となく触れ合う内に特別な心情が芽生え始める。

《ダスティン・ホフマン》の演技に関しては言うまでもなく非の打ち所がない。この役を演じるにあたり、約一年を役作りに投じ撮影に臨んだという。恐るべき甲斐性にも驚かされるが、その甲斐もあり台詞の言い回しや動体演技も細部まで拘り、自然体でリアルな演技が、この作品に深みと上質さを与え、作品の価値をワンランク上へと押し上げていた。

ロードムービーの中に心温まる素敵な人間ドラマを展開させる脚本、キャラクターの人間性を最大限に引き出す巧い演出、役者の好演、それぞれの要素が相まって相乗効果を生み、唯一無二の素晴らしい作品に仕上がっている。さらに、物語の主人公であるチャーリーとレイモンドを通じて、紡がれた兄弟愛と絆に感動。特に、レイモンドへの愛が次第に増してゆくチャーリーの心の変化が見どころだ。

また、本作に登場したレイモンドが抱える自閉症を通して、そのような病気を患っていても肉親の努力と愛情があれば普通に生活していけると思ったが、現実は思っている以上に厳しく、介護の難しさを改めて実感した。
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