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キャラバンのyukoのレビュー・感想・評価

キャラバン(1999年製作の映画)
3.8
ヤクを率いて生きるために塩を積み麦と交換するために、ヒマラヤの険しい山々を超えて町に向うネパールの高原民族の暮らしを生々しく描いた作品。厳しい自然と闘いながらのキャラバンの旅は生死を賭けた過酷な旅である。

演技経験のない現地の人々を起用しての撮影とのことで、人々の表情にリアリティがあった。鳥葬や、雪中行軍、旅を案ずるまじないの儀式など、現代社会に生きる自分には想像を絶する、彼らの営みがリアルに描かれている。脅威であり、また恵みももたらす自然と永く共生してきた彼らの知恵は、ただただ神秘的に映った。

監督は写真家でもあるエリック・ヴァリ。写真家ならではの、美しい映像の切り取りかたが秀逸。1980年代からこの地に住み、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」ではユニット・ディレクターも努めたそうだ。
製作・脚本協力は俳優でもあり、「ミクロコスモス」の製作や「WATARIDORI」の製作総指揮に携わったジャック・ペラン。
音楽は「ミクロコスモス」のブリュノ・クーレ。

オール・ロケを敢行した標高5,000メートルを超えるヒマラヤ山脈の映像は圧巻。そしてブリュノ・クーレの音楽との融合がただただ美しい。

彼らと密接に関わるヤクたちとの暮らしに、「もののけ姫」を観たときのような、自然や動物と共生する人間本来の暮らしの原風景の美しさ、尊さを感じた。生死をかけた雪中行軍のシーンでは「八甲田山」を彷彿とさせるような、雪山の恐ろしさに震えた。時に神のように、時に悪魔のように人を翻弄する、ヒマラヤの山々の神々しさに畏れを抱かずにはいられなかった。山には人智を越えた力があって、神々が住んでいると信じてきた民の心がわかる気がした。
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