どなべ

サン・ソレイユのどなべのレビュー・感想・評価

サン・ソレイユ(1982年製作の映画)
4.0
神が死んだ20世紀に生きた監督が、キリスト教のない世界への救いを求め、そういった世界のメンタリズムを考察するという内容。
そしてそこに選ばれたのが日本とギニア?で、特に1980年代の東京の映像が豊かに使われている。

まず古くから日本人の精神に備わる「もののあはれ」について、人間と自然の調和という解釈(多分そんな感じだった)をする。
これは確かに同意できて、西洋ではプラトンが超自然的立場(形而上学)を作ったのに対し日本ではそれが生まれなかった。
これが劇中「東洋の生と死を隔てる壁は西洋ほど厚くない」という風に表現されるが、しかし日本にも一応あの世とこの世という言葉はある。
そこでさらにアニミスティック?)な世界としてギニアの文化を挙げ、これをフランス、ひいては神を失ったキリスト圏へのヒントにしようとしているのだと思う。


次のテーマは市民革命で、成田空港での反対運動や東京での右・左翼のあり方を映す。
##正直これは唐突というか、見ていて違和感があった。監督の趣味なのかな。
特に成田空港でのデモ活動をキューバ革命にたとえているのだけど、これは踏み込み過ぎたと思う。(多分ゲバラが云々言ってた、違ったら恥ずかしい)
フランスは確かに大きな市民革命でできた国だし、キューバでも大きな革命はあった。
しかし近代日本の成り立ちはそうではないし、それはひとえに「市民革命が起こるほどの貧困も格差もなかったから」だと思うのである。
実際、この映画でも竹の子族やロックへ傾倒する若者を挙げ「成人式とともに大人になり、社会に取り込まれる」という言い方をしているが、これは体制・権力への反抗「そのもの」が目的だったことを強く示唆しているように思う。

##80年代の山谷は今よりディストピアだった、これはよく取材したなあと感心した
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