ネネ

八つ墓村のネネのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
4.2
一番好きなミステリ作家横溝正史の八つ墓村は、市川崑監督の96年版を繰り返し見てきました。
こちら野村芳太郎監督の77年版は、金田一耕助が渥美清さん。
あまりに寅さんのイメージが強くて、なんとなく避けてしまっていたのですが、まったくなんてもったいないことを……!
おどろおどろしく、グロテスクで、エロティックで、美しく、ロマンチック。
残酷すぎて滑稽になっている感じも含めて、『八つ墓村』の魅力に溢れていました。

八つ墓村の事件のきっかけは、戦国時代まで遡ったある祭りの夜のこと。
村人たちは企みを実行に移し、山に住み着いていた尼子の落武者たちを、祭りに招待する。
実は尼子の落武者の中にいる尼子義孝という美丈夫の武将には、毛利から多額の褒賞金がかけられていた。
褒賞に目がくらんだ村人たちは、尼子一派を次々騙し討にしていく。
祝い酒の中に入れられていた毒を飲んでいた落武者たちは、戦うこともできず、ある者は目を貫かれ、ある者は焼き殺された。
そして最後に残った義孝は、血まみれの姿で叫ぶ。
「祟ってやる……祟ってやる……!」と。

落武者というのは、その単語を聞くだけで背筋がゾッとする、なんともいえぬ恐ろしい存在です。
そんなただでさえ怖いものを、容赦ない鮮烈な恐怖シーンに仕立て上げているので、強烈な印象となってこの場面が頭に残ります。

さらに身の毛もよだつような32人殺しや、洞窟の中での様々なやりとり、複雑な血縁関係、閉鎖的な村のあり方といった要素が絡まり合い、本当に何度見ても飽きることがありません。

今回とくに小川眞由美さんの妖艶な寡婦の演技が魅力的だったので、96年バージョンでは注目していなかった恋愛部分に意識が向かいました。
全体に昔の女優さんは、声のトーンが低く落ち着いていて、色気がありますね……!
普段はもっぱら洋画を中心に鑑賞しているのですが、艶やかな女優さん目的で、古い邦画も少しずつ観ていきたいと思うようになりました。
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