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八つ墓村のHKのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.5
横溝正史の同名小説を二度目の映画化。監督は「砂の器」「震える舌」などの野村芳太郎。脚本は橋下忍。キャストは萩原健一、小川眞由美、渥美清などなど。

空港で航空機誘導員をしている寺田辰也。ある日、新聞の尋ね人記述欄に自分の名前があり、ある探偵事務所に行くとそこで母方の伯父と再会する。しかし、急にもがき苦しんで伯父が死んでしまう。不可解に思いながら辰也は自分の出生の秘密と母親のことを詳しく知る為に、生まれ故郷の八つ墓村に赴くことになるが…

「津山30人殺し」が題材の作品は、この後に作られた「丑三つの村」という作品を観ました。あくまでこちらの作品は原案として使っているため比較するのは難があると思いますが、面白さでいうと「丑三つの村」の方が一歩上なのかなという後味が残る。

この映画も一番の見どころが前述した作品と同じく大量虐殺シーンなのだと思うのです。しかし、そこに使われた尺もほとんど短くて、長い映画の中でもあまり印象に残らない。山崎努の演技もとても迫力こそあるものの、全体的に観るとやはり脳裏に残るかどうかは微妙だ。

全体的にも、ミステリー要素よりもオカルト要素を全面に出した作風が功を奏したという評も多いが、個人的には却ってそのオカルト要素がファンタジーの領域にまで入ってしまい、あまりにも現実離れした終盤の展開で強引に伏線を畳むところがちょっと粗かったかな。

しかし、実際にロケをしたことによって映し出される映像美というものは本当に素晴らしい。砂の器に通じるこの田園の景色にはとても見入ることができる。

演じている俳優さんも豪華絢爛で、何よりも渥美清演じる金田一耕助は古谷一行演じる金田一と比べるとちょっと違うものの、これはこれで有りのようにも思える。しかしあくまでも狂言回しとしての役割しか果たしていないのが残念と言いますかね。もうちょっと主演級の活躍話にしてもらった方がミステリー好きの自分としてはいいのかもしれません。

主演を担当したショーケンこと萩原健一は、好青年役ながら中身がショーケンのせいですごいギラギラしている。喋るとちょっと怖そうで噛みつかれそうだ。

今の人としてみると、閉鎖的な小さな寒村で起きる連続殺人ということからどこか「TRICK」を思い浮かべる。今リメイクするなら、堤幸彦がメガホンをとった方が案外しっくりくるのかもしれない。
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