かつて平家の落武者8人を惨殺したという村で、32人もの男女が殺されるという事件が起こる。
そして8年後、再び巻き起こった連続殺人を解くため、金田一耕助が出馬する。
市川×石坂の角川金田一シリーズに対抗して登場した松竹版金田一。
とにかく日本の歴史、風土、そして怨念を描いた傑作。
原作は実際に起こった津山30人殺し事件をモチーフにしてます。
頭に懐中電灯を巻きつけて、日本刀を振りかざして村人を容赦なく切りつけたのは本当の話なんですね。
それがまた怖い。
津山30人殺しに影響を受けた作品の中でも、これに匹敵するものはなかなかないでしょう。
女、子供を容赦なく惨殺していく。
泣きわめいていた赤子の声「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃ・・・・・・・」というシーンは狂気。
戦国時代にあった落武者伝説が残る山中の古い村、『八つ墓村』を舞台に起こる連続殺人事件を中心に、血脈と因習に彩られた悲しい物語が展開する。
注目すべきは、原作に忠実でありながらも原作を逸脱しているシナリオ。
例えば舞台。
原作の金田一耕助シリーズはすべて戦後の日本を舞台にしているが、この映画では公開当時の1977年という『現代』に舞台を移している。
それが故に尚一層、「古い因習に縛られた村」というイメージが増幅されている(今見ると「大昔とちょい昔」という違いにしかならないが)。
この映画で金田一耕助を演じるのは渥美清なのだが、この作品では金田一が派手に活躍することはなく、淡々と事件の背景を説明するに留まっている。
ホラーとしては本当に面白かった。
ただ、ミステリーとして観るとちょっと厳しい。
どちらかと言うと、推理小説というより怪談ですな。
横溝正史のあまりにも有名なおどろおどろしい探偵小説を、怪談映画風に仕立て上げたことには賛否両論があるだろう。
謎解きパズルとしては推理の材料もろくになくてあまりにも不親切だし、犯罪ものとしては警察を始め登場人物たちの行動がまるっきりリアリティに欠けていて、不自然極まりない。
伏線とかが無いから犯人が誰かを明快に推理することは、視聴者には無理だと思います。
だがもちろん、『八つ墓村』の魅力はそんなところにあるのではない。
ハリウッドのホラーではなかなか見られないような、気味悪さがある。
落武者の惨殺シーンの特殊メイク、クライマックスでのコウモリの群れがアニメーションで表現されるなど、特撮がさりげなく使われ、ドラマのおどろおどろしさを盛り上げるのに一役かっている。
閉鎖的な村で起きる事件なんて怖いに決まっている訳だが、ぶっちゃけ古い邦画だしと少し馬鹿にしていた感があったのかもしれない。
キャストも、小川真由美さんや、夏八木さんや、山崎努さんがクローズアップされることが多いですが、寅さん金田一もなかなかいい味です。
石坂金田一だったらどうなっていただろうか?
ちなみに、『八つ墓村』は何度もリメイクされていますが、個人的に稲垣吾郎版が一番好きかな。