あきらむ

ピアニストのあきらむのレビュー・感想・評価

ピアニスト(2001年製作の映画)
4.8
女性の主体的な性を描く作品が近年増えている中で、ここまで女性の性欲の閉塞感と性倒錯を描いた作品はないのではないか。しかし、単なる変態メンヘラ映画と切り捨てられない。

ハネケ監督は見た人をタブーを破ったかのような感覚に陥らせるのがうまいので、女性の性欲というテーマと相性がいい。覗き見趣味的な要素は相変わらず多分でgood。

女ピアニストと男子生徒の性愛がこじれていき、気丈だった先生のアイデンティティが崩壊してしまう物語、と聞くとちょっとエロいのかなと思ってしまうけど、エロさはほぼない。とにかく辛い。前半が微笑ましかったり結構笑える場面が多い分、後半は凄く気持ちが悪い。しかもその辛さが切ないとか寂しいとかじゃなくて、行き場のない怒り、生まれてきてごめんなさいという怒りからくる。

すれ違い、何もかも上手くいかない!人間関係がうまくつくれない!なぜなんだ!という先生の歯がゆさが痛いほど伝わってくる。もちろん生徒も滅茶苦茶に傷ついているだが、男性的な復讐ができるぶん、先生のほうがやばい。

そして先生の母親。この子供を徹底的に支配する母親、見てると本当にね、目の前で自殺したくなってくるね……!ねちねちねちねちねちねちと、子供を自分の所有物としか見ておらず、結果としてこの性倒錯でコミュ症の可哀想な先生が誕生した。母親と娘の異常な関係性は見えないだけで巷に溢れているだろう。

すれ違う性愛関係の見たくない一番痛々しい部分を煮詰めたような映画だった。でも、見ちゃう!見るなと言われなら見たくなるような!毒々しいし死にたくなるのに!惹きつけられてしまう!ゆるふわ~なんてもうね、見たくないの。こういうのが見たかったんです、はい。
ただ、あまりに刺激が強過ぎてしばらくの間ピアノを見る度に吐きそうな気分になりそうだ。メロロマンス映画が可愛いケーキだとしたら、これは次郎系ラーメンだね。映像自体はとても綺麗なのにね……。