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シンドラーのリストのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
3.5
第二次大戦下のポーランドで1100人余りのユダヤ人をナチスによるホロコースト(ユダヤ人の大虐殺)から救ったとされるドイツ人実業家オスカー・シンドラーをユダヤ系であるスティーヴン・スピルバーグ監督が英雄的に描いたドラマ。
撮影はスピルバーグがこの作品以降組むことになるヤヌス・カミンスキーで、ほぼ全体をモノクロで印象的に撮っている(インターミッション前に登場する少女のコートは赤のパート・カラー、ラストシーンもカラーが使われる)。
音楽はいつものジョン・ウィリアムス。
原題:(英) Schindler's List(1993、3時間15分)

1939年9月、ドイツ軍に2週間で占領されたポーランド、南部の都市クラクフ。
ナチス党員であるドイツ人実業家オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)は、金儲けのためにこの町へやってきて、巧みに軍の幹部たちに取り入り、ユダヤ人が所有していた工場を安く買い上げて、軍用ホーロー容器の製造工場を始める。
41年3月、ナチス党政権下のドイツ軍はユダヤ人を狭いゲットー(居住区)の中へ押し込める。
シンドラーは、金に物を言わせ、愛人を作り、ナチスの軍人たちと奔放三昧。妻エミリエ(キャロライン・グッドール)と別居し、工場の経営はユダヤ人会計士のイザック・シュターン(ベン・キングズレイ)を責任者に任命して任せ、安価な労働力としてゲットーのユダヤ人を雇い入れる。
43年2月、ゲットーが解体され、ユダヤ人たちはプワシュフ収容所に送られ、やがて悪魔のように冷酷なSS(親衛隊)将校アーモン・ゲート少尉(レイフ・ファインズ)が所長として赴任して来る。
ゲートとその部下のSS隊員は、ユダヤ人を次々と無慈悲に殺戮していく。
44年、敗色濃いドイツ軍は、ユダヤ人をアウシュヴィッツをはじめとする絶滅収容所に送り込みはじめる…。

~その他の登場人物~
・ゲートのメイドとして雇われるヘレン・ヒルシュ(エンベス・デイヴィッツ)

「パワー(力)とは、人を殺す正当な理由がある時でも、殺さないことだ」

「一つの命を救う者が世界を救える」(ユダヤの聖典"タルムード"より)

原作はトマス・キニーリーのSchindler's Ark「シンドラーの箱船」(米国:Schindler's List、日本「シンドラーズ・リスト — 1200人のユダヤ人を救ったドイツ人―」)だが、読んでいない。
映画では小説に書かれている大事なことが抜け落ちているようだ。例えば、妻のエミリアが別居を解消した後ユダヤ人を救うために重要な役割を果したこと、シンドラーが愛人を作って妻を裏切り続けたこと、ユダヤ人自身がシンドラーのリストに入るために賄賂を渡した話など。
また、9時間27分のドキュメンタリー「SHOAH ショア」を撮ったクロード・ランズマン監督は、この映画を「出来事を伝説化するものである」として鋭く批判しているらしい。
加えて、私が読んだシモーヌ・ヴェーユ(1927年7月13日~ 2017年6月30日:アウシュヴィッツから生還し、フランスの保健大臣や欧州議会の初代議長、ショア財団の理事長などを務めた政治家。人工妊娠中絶法を成立させるなど女性の自由獲得などのために貢献)の「回想録」から、彼女のこの映画についてのコメントを、ショアやホロコースト、戦争に関する現実認識が乏しい私たち多くの日本人のために、紹介します。
~映画「シンドラーのリスト」だが、シンドラーの勇気ある行動の恩恵を受けたのはせいぜい50人程度なのだから、この映画は事実を歪曲している。もちろん彼の行動はそれだけで立派な行為だが、しかし現実は映画のシナリオとは大分違う。多めに数字を見積もることと粗野な歪曲とは少なくとも区別すべきである~
歴史上の人物が描かれる時、事実と違う脚色がなされるので、注意が必要。
終盤はいかにも感動を盛り上げようとしているのが見え見えなのも残念ですが、歴史勉強の機会にしたいですね。
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