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シンドラーのリストのmatchypotterのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
4.0
前回『ライフイズビューティフル』に次ぎ、はたまた第二次世界大戦のナチスドイツ占領下におけるユダヤ人の強制収容と強制労働に因む不朽の名作『シンドラーのリスト』。

Sスピルバーグ監督。
195分の超巨編。名作なのにレビュー数が比較的少ないように思うが、確実にこの長尺が影響してると思う。

リーアムニーソン、渋すぎる。
93年の映画で、あえてモノクロで収めてるところ、その色がない映画で醸し出す色気と覇気ではないレベルの違う男の雰囲気が醸し出されてる。

その彼が演じるオスカーシンドラー。実在の人物で実際に約1100人のユダヤ人をアウシュビッツ行きから、はたまた虐殺から救った男。

最初は自らのビジネスによる金儲けのために賃金の安い労働力としてユダヤ人の雇用を始める。

自分もナチ党員だから、本来は政策に従い、迫害、強制労働を強いる側の人物。
当初は彼もユダヤ人を対等の人であるいしきはなかったかも知れない。

それが、有能な人物と巡り合ったり、ユダヤ人の虐げられる光景を目の当たりにしたり。
そしてそれらユダヤ人への大した理由もない処刑による人手不足が自ら興した工場の経営に影響を与えることが、少しずつ彼の心境を変えていく。

いつしか、金と権力の中で生き、プレイボーイっぷりで豪快に散財もする彼が、その金を使い、あの手この手で収容所のナチスドイツ側の軍人と交渉したり、ユダヤ人を密かに救済できるような会社経営に乗り出したり。

「1人の人間を救う者は、全世界を救う」

彼の墓石に刻まれてる言葉、らしい。
この言葉はタルムードというユダヤ教の聖典から引用されている言葉。

彼が始めたことが、彼が生し得たことが、人種や立場を超えてユダヤ人側からもこうした言葉が贈られていることが何よりの彼の功績の証明かも知れない。

最後に彼に贈られてる指輪は本当に金歯から作られたらしい。

「シンドラーのリスト」。
彼の右腕が作りながら言葉にした通り、本当に「“善の”リスト」かも知れない。
このリストと、このリストに書かれた人々をしっかりと外に放り出されないように尽力した彼の願いがこの映画からとても伝わってきた。

そして、スピルバーグ、流石としか言いようのないスケール。

悲痛な収容所と閉鎖的な工場が中心のドラマ性の高い映画でありながら、そのロケーションやら、ちょっとしたシーンですら夥しいエキストラ。
人、人、人。

殺される人も、焼かれる人も、それを運ぶ人も。
ドイツ側もユダヤ人側も。
大人も子供も、男も女も。おじいちゃんやおばあちゃんも。

とにかくとんでもない人と場所で描き、尺も含めて余すことなく第二次世界大戦下の、ナチスドイツの姿勢や態度、そして、それを耐え忍びながら、何が起きてたかを描き切った名作。

そして、ナチスドイツとユダヤ人に因む話はなかなか絶望と悲しさが多い中で、『ライフイズビューティフル』がユダヤ人の中からなら、こちらはユダヤ人の外からの救いを描く。
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