LudovicoMed

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

3.7
《三池崇史がキルビルをやるなら、? オールスターキャストがそれに応えてくれた》

『パロディ映画』しいてはパロディを創り上げる上で邦画の業界人は何か勘違いしてはないだろうか?それは元ネタについての"再解釈"を完全放棄し、「ここでこのネタ出しときゃ、気が利いてて笑えるっしょ」とまるで学園祭ノリの如く寒い空気しか生まれない。なぜこのネタでパロディするのか、という解釈が見られないのだ。

話題が逸れました。つまり事程左様に本作こそ、これぞパロディ映画に相応しい一作だと思えるのです。

タランティーノはキルビル、デスプルーフで過去の膨大な映画の記憶から、エクスプロイテーションなるジャンルの語り口で古典的映画の興奮を逆説的に紡ぎ出した。ゲテモノ、B級でもここまで面白くなるんだぁ、と世界を驚かせたのです。
さて、本作はキルビルが発明した、サンプリングを"宣言する"映画だ。マカロニウェスタンが日本で出来ないならスキヤキにしてしまえばいいじゃん!と強引な発想から生まれた珍作なのだが、いわゆる"タランティーノごっこ"系譜の邦画の中で、最も光る一作ではないだろうか。

そんな本作は、パッケージ情報が渋滞している。
•イタリア製マカロニウェスタンを架空の日本製スキヤキウェスタンで再解釈
•物語の"ベース"に『用心棒』経由して『荒野の用心棒』も引用
•物語の"モチーフ"は壇ノ浦の戦い後(南北戦争後感の踏襲)の源氏と平家2大勢力を紅白チームカラーに分け対抗する
•オマージュ先は元祖ジャンゴこと続・荒野の用心棒
•ジャンゴといえば忘れてはいけない例のコールアンドレスポンスな主題歌は北島三郎が担当
•イタリアからマカロニウェスタンが輸入される際、英語に吹き替えられたオマージュとして、全編英語言語に挑戦
•そして、海外からの刺客タランティーノが参戦
とまぁキャッチコピー情報から細かすぎて伝わらない引用が山ほどあるのだが、本作極論を言えばこれ以上の映画的エッセンスを打ち出すものはありません。ギミック仕掛けでスカスカな映画には間違いないのですが、この茶番に応えるべく贅沢すぎる役者が集結し、このバジェットで魅せることでお祭り映画モードで観客も参戦したくなるのだ。

案の定、アクション的躍動感は、はなから放棄し、三池印のギャグ漫画にしか見えない誇張表現をドヤ顔でかます。だがそこには『続・荒野の用心棒』のかの有名な無限ガトリングガンから『デスペラード』『女ガンマン 皆殺しのメロディ』といったマカロニウェスタンの旨味を悪ノリ込みで抽出し、まるで『HiGH&LOW THE MOVIE』『TOKYO TRIBE』のような箱庭ファッションのイケイケ演者達が無軌道に殺し合う。
終いには、タランティーノにちゃぶ台返しさせながら「amamiがクドすぎる」とスキヤキを語るのだ。それも吹き替え版ではタランティーノ役を三池崇史が喋るというのにいちいち笑う。

まさしく21世紀最強の邦画オールスターキャストで悪ふざけをやってのけたのだ。三池崇史は以前『IZO』でオールスタームービーを撮っているのだが、こちらの方が明らかに華があり、特に死に様を見せ場としたギャグ演技の数々、そして度を越したご都合主義など結局パロディ映画の枠留まりであるが、笑いの方が勝つので悪い気はしません。

これほどキルビル型ないしタランティーノごっこを作り手側も観客も楽しんだ作品があっただろうか。
こういう作品も三池映画の醍醐味でありました。
あれっ、そういえばジャンゴ出てくるかって? ちゃんとその要素も三池監督は考えてあるようです。
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