八木

カーズの八木のレビュー・感想・評価

カーズ(2006年製作の映画)
3.9
最新作に向けて予習するなど。
登場人物がすべて車であるってことの無理っぽさが常に引っかかってきた。例えば、ガソリンというものが食べ物の立ち位置なのか、本当に車におけるガソリンという立ち位置なのか、これを見る限り最後までよくわからない。この世界ではトラクターは家畜で話もできないし、コバエも車の形に羽が生えている。動物とか完全に架空の生物でないから、人間のように暮らすということに違和感がずっとあります。人間社会でコバエは人間に羽生えてる生物ちゃうからさ。
この映画は、「つながりを得る・作る場所」について描かれており、それが孤独な天才凄腕ドライバーの話ではなく、「意思を持った車」でなければならない理由について考えていたのですが、この映画の主人公が人間だった場合に「実際的な故郷」というものが明確になりすぎるのが、メッセージとしてぶれるからである気がしました。この世界における車が人間と同じなのだとしたら、部品の組み合わせで生まれるものではないし、かといって受精する過程も想像できないし、冒頭から突然現れた「ライトニング・マックイーン」という車の生物はすでにその世界にあったものとして認識しやすいのだと思います。そして、心的成長によって故郷を移すことに、マックイーン本人も見ている側も違和感が『薄い』という。
ピクサーディズニー、監督脚本ジョン・ラセターってことで、テーマと生み出したメッセージの固さは間違いない出来栄えで、レースの気持ちよさとマックイーンの成長で盛り上がりをしっかりいただけました。キングのキャラ立ちの弱さのおかげで、最後の展開は乗り切れないところがありましたけど、勝利・効率ばかりでない『つながり』の強さと素晴らしさを説得力を持って伝える、良質のアニメ映画だと思います。
しかし、どうあって、「意志を持つ車が生活する社会」の違和感は消えず、火消しの言い訳後出し感とくすぶりは残り続けます。おそらく、「人間のような車がいたら」という想像を製作サイドもやりきれてないのよな。この程度の違和感で耐えたのは大したもんだと思いますけど。
八木

八木