安堵霊タラコフスキー

ラストムービーの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ラストムービー(1971年製作の映画)
4.5
イージーライダー同様、監督デニス・ホッパーの凄さを思い知らされる怪作

映画の映画的側面のあるこの作品だが、冒頭からサミュエル・フラーの仕切る撮影現場の風景が混沌とした様相を呈していてこの時点でヤバさが如実に伝わってくるが、その劇中映画の銃撃戦はワイルドバンチ以上のクオリティがあって普通に西部劇作っても力作になっていたろうにあえてそうしないところにロックを感じ、それでいてデニス・ホッパーの漂わせる孤独な哀愁がしっかり伝わる描写をしている点に監督として俳優として地力が見え、と思いつつ見ていたら20分経ってようやくタイトル出たことにもおったまげ、こいつは凄いと驚嘆した

そこから終盤までは、ペルーという地やそこに住む人間を侵食する文明の毒というテーマを感じさせつつ、猥雑ながら少し大人しめな展開になったもののと相変わらずネジが飛んでる描写の連続に流石だと思っていたら、そこからラスト30分前でまた冒頭のような頭おかしい展開に戻って唖然としたけど、その点にも普通のドラマを撮ろうとしたら結局カオスへと立ち戻る性みたいなものが見えて色んな意味で常軌を逸していた

といった具合に、編集の遊びを要所要所で取り入れていたこともありゴダールやフェリーニ、グラウベル・ローシャばりの滅茶苦茶さがある訳わかんない作品で実に素晴らしかったのだけど、特に気に入ったのは映画の真似事をして暴徒と化す住民の一連のシーンで、カメラがないから結局過激だけど無意味なごっこ遊びにしかなっていないのにそれを外側からちゃんと撮っているため実際映画になっている点にメタ的な意味が感じ取れて、作品に深遠さが生まれていたように思えた

しかしデニス・ホッパーの監督作品はイージーライダーを除いて不当な低評価を下されたものばかりで、彼の生み出す暴力的作品の数々は今こそ正当に評価されるべきだ