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殯の森のまるまるのレビュー・感想・評価

殯の森(2007年製作の映画)
3.5
殯【もがり】
敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間の事。
また、その場所の意。
語源に「喪あがり」
喪があける意、か。

冒頭。
強風でざわざわ揺れる森が、やがて静かになる。
ジブリ映画のように、渡る風に波打つ田んぼ。
そこを粛々と横切る葬列。
「殯の森」ってタイトルが効いてて、森、山、自然を映したカットに、何か擬人化された意志が、こちらを見ているかのように思えた。

山の上のグループホーム(軽度の認知症老人の為の介護福祉施設)。
真知子(尾野真千子)はそこの新人ヘルパー。
しげき(うだしげき)は入居者。
二人とも、大事な人を亡くしてる。

体が丈夫なボケた爺さんを森に放ってはいかん。
すっかり子供になってる。
子供は無敵。
それがお客さんなら尚の事。
まして、経験の少ない真知子一人しか対応できる人がいない状況。
怖かったw

個人的に初の河瀨直美監督作品。
2007年、この映画でカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した時、めざましテレビかなんかでその報道を見たのですが、なんでも河瀨監督は専門学校の講師を勤めながら映画を作ってる人だそうで、世の中にはスゴイ人もいるんだなぁと思った記憶が。
1992年に最初の映画とってから15本目。
時間にして15年目の映画。
実際この映画を観て、スゴイ人なんだなぁと思った。
尾野真千子を脱がせてましたよ。この監督w
相手の爺さん役が、うだしげきさん。
https://ja.wikipedia.org/wiki/殯の森
によると、
この人は役者さんではなく、奈良の古本屋店主だそうで、文芸講座を催したり、地域雑誌の発刊などしてる人とのこと。
この人が、尾野真千子の生乳拝んだり、背中で生乳感じてたなんて、うらやま…いや、ビックリしたw

森は彼岸と此岸の境界。
画面にハッキリと描かれた閉ざされた異界。
必死に現世に戻ろう、戻そうとする真知子。
「七つまでは神のうち」と言いまして、子供は向こう側に近い存在。
その、しげきに引っ張られるうちに、すっかり同行人になってた。
彷徨える弔い人二人。
現世から離れたところで、修験者のように何かに向かい、森の奥に分け入ってく二人。

死者を弔うという行為は、人が文明を持つ前から行われてた事で、ネアンデルタール人にも、そうした行為をした跡が見られるのだそうです。
「喪」という、プリミティブな情動に想いが巡る映画。

森に入ってからの神話的な感じ。
面白かったです。
現世から、二人を呼ぶあの音が聞こえてくるまでは。
どうなる、どうする???ドキドキ状態でしたが、
「ミツバチのささやき」再びw
俺、そこ越えたことないから、どうしてもわからんわ!

ラストはあれでよかったのかなぁ?
まぁ、しげきさんは良い…としても、
真知子はどうなんだ?
美しすぎるっていうか、ちょっと怖いんだよなぁ。
いっそ、完全に神話にしちゃって、
あそこから真子が体グジュグジュの状態で蘇って来て
「みーたーなー」とかヨモツシコメと共に森の境界まで追っかけてきたら…ないわw
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