うらぬす

殯の森のうらぬすのレビュー・感想・評価

殯の森(2007年製作の映画)
3.5
茶畑の遠景の匂い立つような濃い緑色。老人を多く抱えたグループホームの周りを、生命の静かだけど大きなうねりを強く感じさせる景色が取り囲んでいる構図は、情緒があるけど同時にどこかギョッとさせられる。物語が進むと現れる割れた西瓜の赤や焚き火の橙はひどく印象的だし、自然の厳しく荒々しい一面にも驚かされる。
ストーリーは抜きにして映像の雰囲気の遷移だけを追えばなんだかとてつもないものを観ている気分になれそうなのに、いまいち尾野真千子演じる介護士の心情に寄り添えず、ラストシーンには首を捻ってしまった。
まあでも胸の底の方に重い打撃を受けたような感覚は残ったし、有意義な鑑賞体験だったという満足感も得られた。