日向日向

劇場版 空の境界/第二章 殺人考察(前)の日向日向のレビュー・感想・評価

4.0
織と式

第2作目は時系列でいうと、作品数で並べた時を考えると1番過去に当たる作品です。(作中の回想シーンなどを抜きにした話ですが……)

今作は両儀式と黒桐幹也の出会いにのみ焦点を当てた作品であり、全体的なアクションはかなり薄め。
ある雪の夜、幹也は1人佇む式に出会うシーンから始まるわけですが、ufotable渾身の雪の描写は本当に美しく、必見の価値はありますよ。比較するなら未来福音の方が美しかったりするのですが、2作目の時点でここまで魅せられるのは作品が皆に、製作陣に愛されている他なりません。

タイトルから、ある殺人事件に関する考察と捉えられがちですが、そうではなく、ある殺人事件を通して式にとって、幹也にとって、そして織にとっての殺人観を明確に提示するのに徹した作品であるわけですからなかなかに奥が深いです。
拒絶する織、追いかける幹也、暗躍する式や様々な人間を交えて物語の幕を閉じる方法なども極めて秀逸で、今までゆっくりと構築してきている世界観が完成にまた近づいたと感じさせられます。

作画としては、特に気になったのはまたしても血液です。今回の血液は紅が映えるだけでなく、血液に星霜を反射させているのです。そんな猟奇的でありながら、同時に幻想性を包容させるというかなり奇怪な演出を取っており、それが非常に僕の印象に残りました。
もちろん楽曲の良さも言うまでもありません。梶浦由記氏作詞作曲の『君が光に変えていく』、世界観に非常に適合しておりました。

数ある型月作品の中でも1番に好きとも言えるこの作品はやや評価が甘めになりそうですね。
日向日向

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