イペー

エメラルド・フォレストのイペーのレビュー・感想・評価

エメラルド・フォレスト(1984年製作の映画)
3.6
詩的なのかと思わせて散文的…どころか、業務連絡であるかのごとくラディカル。
掴めない…掴めないよ、監督…。

まさしく"異才"と呼ぶべきジョン・ブアマンの手による、神秘の密林アドベンチャーなのであります。

パパは未開のアマゾンでダム建設。
昼間のパパはちょっと違う。家族四人で仕事場見学。
7歳の息子トミーはジャングルに興味津々です。

ところが一大事、両親がちょっと目を離したスキに居なくなったトミー。焦るパパとママ。
職場の皆さんと山狩り、しかして愛息の行方は杳として知れず。

いつしか十年の歳月が流れ、周囲の人々が生存を諦める中、パパだけがトミーとの再会に執念を燃やし、未踏のジャングルの奥深くへと、捜索の手を伸ばすのですが…。

大らかに理想化されて描かれる精神文明、そして先住民の皆様。
欧米人にとって畏敬や畏怖の対象である彼らの営みに、図らずも紛れ込んでしまった少年トミー…実は監督自身の息子さんが演じているんですよ。うん、綺麗な顔しとる。

秘境に分け入る父親の冒険譚としても、幻の部族に取り込まれていく息子の成長譚としても、妙にサバサバしたストーリーテリングのおかげか、どっこい感情移入が難しい。

鷹の魂を宿して俯瞰で見降ろす密林、部族の方々の祭礼と儀式、フリーハンドでビルを登る少年…などなど、精神の深奥を覗き込むような観念的な描写がある一方で。

気のいい兄ちゃんが人食い族にボコボコにされたり、謎のカメラワークでコントのような救出劇が繰り広げられたり、活劇の部分では緊張感のカケラも無く、いったいぜんたい何が何やら。

幻惑され、翻弄され、足りない頭を捻りヒネリして、監督の真意を探りつつ鑑賞を続けておりましたところ、最後の最後にテロップ。
「環境破壊はアカン」っていう…。

まあ、アレですよ。アマゾン版『もののけ姫』的な感じですよ…と無責任に申し上げといて、本稿の結びといたします。

…ハイペースで映画を観る毎日が続く中、どうしてか本作が頭から離れない。
新作、名作、かなり幅広く観てるのに。
これぞブアマンマジック!!
イペー

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