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私の中のもうひとりの私の一人旅のレビュー・感想・評価

私の中のもうひとりの私(1989年製作の映画)
4.0
ウディ・アレン監督作。

キャリアも私生活も恵まれた女・マリオンが失われたもう一つの自己に気付いていく過程を描いたドラマ。
ウディ・アレン監督作品だが『インテリア』や『セプテンバー』同様にシリアスな内容。病める女を演じさせたら超一流のジーナ・ローランズが主人公マリオンを演じている。幸福で完璧に見える人生に隠された自己欺瞞が露わになりマリオンは苦悩する。夫との結婚の際も、心の奥底では“これでいいのよ”なんて妥協的な思いがあったのかもしれないのに、自分の心の中で無理やり結婚を正当化する。子どもを持つ、持たないに関しても、生まれる子どもに愛情を感じることが怖くて結局産む機会を見逃してしまう。“自分の下した選択や行動が間違っていることに耐えられない”という思いはある程度理解できる。誰だって失敗はしたくない。だから、失敗を実感することのないように予め自分の中に予防線を張る。つまり、自分の行動や選択が絶対的に正しいものだと“思い込む”ことだ。だがそれは自分自身の心に対する偽りであり、人生が空虚さに支配される原因にもなる。白い仮面を被ったマリオンの姿は自身の偽りに満ちた心を象徴している。偽りの自己である仮面を被り、心の中で正当化したつもりの自己を無理に演じているのだ。
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