なんともいえない深い余韻。人の心の深淵を覗くような。
ウディ・アレンの、これまでの作品どれにも似ていなかった。冒頭流れるエリック・サティの音楽が本作の雰囲気をよく表していると思う。
50歳の女性哲学教授(ジーナ)。彼女は隣室から漏れ聞こえるカウンセリングの会話に耳をすますようになり、これまで満足していた自分の生き方に綻びが見え始める。そして自分の人生は欺瞞に満ちていたのではと感じるようになる。
コメディ映画をたくさん作ったウディ・アレンが、心のひだに入り込むようなこんな繊細な、内向的な作品を作っている。彼の人間の洞察力の深さに驚く。
乾いた心にじんわりときれいな水分がしみてくるようなラストがとても良かった。