はたらく車
カー・ホラーなるジャンルはかなり細分化が進み、定義そのものが難しかったりする。だがこれは手放しでカー・ホラーと定義できると何処かで聞いた。怖みこそはないが、確かにな、と唸らされる一作だった。
冴えない少年は車弄りに命を燃やしていた。親からの小言や不良たちからの嫌がらせに負けじと勤勉に学ぶ彼は、不思議なボロ車に出会う。惹かれた彼は、その車を直すにつれ、人格そのものを変えていく。
豹変ぶりが爽快だ。親身に接してくれた友人があまりにも不憫に思えてならない。実際、ある段階を超えた主人公のクリスティーンへの愛は病的で、非常に恐ろしい。
車を傷つけられた結果、彼は迷わず人の道を外すことを選ぶ。だが、こんな爽快感のある復讐映画はそうあるだろうか? ないと断言できる程にスカッとさせられた。
もう執念がすごいのである。
車体を傷つくことに異様に拒絶感を示していたというのに、いざ復讐となると圧縮されようが、黒焦げになろうが完遂するその様は最早開き直りを感じられる。
そして殺す際に、古風なロックソングが流れるのだが……その和訳を調べてびっくり。懸命なクリスティーンから主人公への愛の歌、感情の歌であるそうだ。
なんだこれは! これでは恋愛映画ではないか。車と人の……最高じゃないか。
免許を持っていないというのに、早く車を乗り回し、大事にしたいと思えた。確かに終盤の彼の行動は褒められたことではないけれど、ものを大事にする、壊れると誰よりも悲しむ、そんな様はすごい共感できるね。