みおこし

手錠のまゝの脱獄のみおこしのレビュー・感想・評価

手錠のまゝの脱獄(1958年製作の映画)
3.9
もう流石スタンリー・クレイマー!!期待を遥かに超えてきました!

移送車の事故により、脱獄に成功した白人のジョーカーと黒人のカレンの二人。しかし、手錠に繋がれたまま離れることは出来ない。警察も「じきに殺しあうだろうから追跡しなくていい」とまで言う始末。当初はジョーカーは差別心むき出しで接し、カレンもそれを敵対視するものの、旅の中でいくつもの危機を乗り越える中で次第に打ち解けてゆく。そして追いかける警察。

ネタバレになるのであまり書きませんが、個人的にはアメリカン・ニューシネマの走り?と言っても過言ではないほど、アウトローを正当化して描いている、当時としては珍しい一本だなと思いました。二人とも非の打ち所しかない(笑)悪党なのに感情移入できる。勧善懲悪のヒーローものばかりだった当時のハリウッドの世相を思うと画期的。
そして、何よりも公民権運動が激化する前にこの作品を完成させたスタッフに脱帽。もちろん差別描写は多々あるものの、途中からカレンを黒人としてではなく「同志」として平等に描いているのは、1950年代の作品と思えないし、素晴らしいことだと思う。よくポワチエもカーティスもこの作品のオファーを受けたな、と二人がどんな思いでこの作品に挑んだかぜひ裏話を聞きたくなるくらい。
ラストシーンは『レザボア・ドッグス』のあるシーンを彷彿とさせたけど、タランティーノは意識してたのかな?

黒人俳優の地位を確立させた草分け的存在シドニー・ポワチエの代表作の一本として有名ですが、あえてトニー・カーティスをこちらでは書きたい!『お熱いのがお好き』ではジャック・レモンに完全に食われてたり(笑)演技が過小評価されがちな役者さんの一人だけど、口数の少ない無骨で粗暴なジョーカーがだんだん友情に目覚めていく様を本当に見事に演じ切ってます。某シーンではめちゃくちゃ色気があってカッコいいし、憎めないアウトローをこんなにクールに演じられるなんてすごい。
彼の作品ではベストだと思います。

色褪せない名作!おすすめ!
何だかんだモノクロの1950-1960年代の作品は本当に名作ぞろい。
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