次郎

羊たちの沈黙の次郎のレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
3.7
いやこれ完全に強姦映画ですよね。OPでのエレベーター内で強調される、ジョディ・フォスター演じるクラリスと男性たちとの体格差。閉鎖病院内では身体的にも精神的にも汚されて、一般職員や犯罪者からも視姦される。タイトルとも関係する、レクター博士相手に語る暗喩に満ちたトラウマ語りがもたらす内面的屈服はある意味で本作のハイライトと言えるだろう。ジョディ・フォスターって過去も『タクシードライバー』では13歳で娼婦の役をやらされているし、ほんと難儀な立場が似合いすぎてちょっといたたまれなくなる。

もちろんアンソニー・ホプキンスによる怪演、カメラワークや演出によってもららされる全編に漂う緊張感はかなりのもの。終始性的な眼差しに苛まれるクラリスが、ハンニバルを前にした時のみそこから解放され、彼に父的なものを求めてしまっている構図というのは作品としては巧みなのだけど、個人的には嫌悪感を生じてしまうものであった。誰かが本作のテーマを「痛みを乗り越えるもの」とか書いてたけど、いや本当のトラウマって自覚できないからこそトラウマなんだし、暗喩でしか表せないそれは本作において何一つ解消されてないよなと思ってしまった。

あと人食いハンニバルという通称ってちょっとダサいなと思ったけど、英文でのHannibal the Cannibalという韻の踏み方はカッコいい。
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