アンダーシャフト

羊たちの沈黙のアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.0
劇場で観たあと、幾度となく観たサイコサスペンススリラー。

FBIアカデミーの訓練生クラリスは、連続猟奇殺人事件の手掛かりをつかむため、人肉事件で収監されている元精神科医ハニバル▪レクターと面会する。ガラス越しにレクターと対峙したクラリスは、身なりからレクターに自分の日常生活を言い当てられ愕然とする…

猟奇殺人犯を追い詰めるストーリーを軸にしているが、この映画の肝は、クラリスとレクターの舞台劇のようなやりとり。

自分にとってレクターは、高度な知能を有し人を補食するモンスターだ。
挨拶するように、歯を磨くように、子犬の頭を撫でるように、人を殺し食する。

彼にとって人は、獅子や虎にとっての鹿やウサギにすぎない。だから人の顔に噛みつく行為や腹を裂くことに微塵の抵抗感もないのだろう。加えて、常人を超えた知識、観察眼、洞察力を兼ね備えているのがたちが悪い(なじるだけで隣の独房のヤツを自殺に追い込む話術って、怖すぎる…)
こうした彼の強烈な狂気と異常性を、アンソニー▪ホプキンスが、感情を抑えた含みのある静かな演技で見事に表現している。

クラリスとレクターが、一瞬人差し指を触れあうシーン。
一部の映画ファンの皆さんや評論家の方からは、「レクターのクラリスに対する親愛の情」「敬意の表れ」「クラリスを人として認めた瞬間」と様々な(どちらかと言えば好意的な)解釈があると聞いています。でも、自分にはそうは見えない。(その正解を自分は知らないので、甚だズレてたらお詫び申し上げます…)
レクターがクラリスに触ったのは、小動物にさわって相手の反応を楽しむ飼い主のそれに見える。
そういう意味では、レクターの謎かけに翻弄されながら涙目でけなげに犯人に迫っていくジョディー▪フォスターも、もう一つの見所ですね。

グロシーンが怖いと言われがちな作品ですが、レクターの一挙手一投足に天才異常者の恐怖が満載の名作です。