カント

夜と霧のカントのレビュー・感想・評価

夜と霧(1955年製作の映画)
4.3
人類全ての人が、この映画を見るべきだ!と、とある人が評したアウシュビッツの真実。
たった32分間のナチスによるユダヤ人の強制収容所ドキュメント。

強制収容所を生き抜いた心理学者ヴィクトール・フランクルの名著「夜と霧」とは別物。私もフランクル原作の映画化と思っていたが、違っていて、本作のタイトルがフランクルの著作の邦題に転用されたようです。

元々「夜と霧」はヒトラーの出した命令でユダヤ人の夜間逮捕/一家の霧散(霧の如く存在を抹消)を意味していて…夜陰に乗じて強制収容所へ移送されるユダヤ人。

ワルシャワで、プラハで、ブリュッセルで一斉に検挙される。
移送後、裸にして、坊主にして、入れ墨でナンバリングして、番号で人間を分類。

粗末な宿舎では、毛布を奪い合い、各国語で罵りあい、密告しあい、新入りをイビる。
8月の猛暑でも厳寒の雪の中でも強制労働。血の小便は当たり前。ナチス親衛隊にたえず見張られて、暇つぶしに殺される。

ヒトラーの右腕、ヒムラーの視察。
「強制収容所の“生産性”を向上しろ!」と。
生産性の向上とは?
強制労働の効率を上げる事か?
ユダヤ人の死体処理を迅速化する事か?
生産性とは…文字通りユダヤ人の死体からの生産で、死体を材料として
毛髪から毛布の生産。
骨から農園の肥料を生産。
脂肪から石鹸の生産。
皮膚も加工して意匠を施し商品にした。

一応、知識としては知ってはいたけれど、これほど凄惨な生産を人類は清算できるのか?
ナチにとっての聖餐か。

目を覆いたくなるような、飢餓でガリガリの死体の山が真実を静かに伝える。
カント

カント