ユミコ

夜と霧のユミコのレビュー・感想・評価

夜と霧(1955年製作の映画)
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第二次世界大戦中の、ナチスによるホロコーストを記録したアラン・レネ監督作。
ずっと前から観なければならないと思いつつ、今の今まで観ていなかった。そんな方は多いはず。それは全く良くないと思う。これは全世界の全世代が直視しなければならない記録。出来れば義務教育のうちに学校で見せるのが望ましい。
これまでNHK等でも同じような記録を何度か観たが、ここまで数多くの死体を見たのは初めてだったと思う。

のどかな風景の楽しげなリゾート地の隣にある強制収容所。今では当然ながら廃墟と化し、鉄条網も朽ち果てている。
過酷な極寒の中や猛暑の中での強制重労働。それ以外にもまだまだ残酷な仕打ちが…。ヒマ潰しに殺された人、人体実験用に売られた人… そして死体から石鹸を作ってみようとしたり、人骨を肥料に使ってみようと試みたり、女性の髪を加工し毛布を作ってみたり… 奴らは常に生産性至上主義であり、人は道具で、使える部分は最後の骨までをも徹底して使い果たす。こんな事、一体誰が考えたの…。
全て剥ぎ取られ済みの大量の死体を、予め大きく掘られた穴の中にブルドーザーでゴミ処理の如く押しながらまとめて落とす映像に絶句。

ラストのナレーションで、
「……ある国の、ある時期における特別な話と言い聞かせ、消えやらぬ悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる」
と語っていたが、これまでも、そして今でもそうなのに、これが、時が経てば経つほど更に誰もがそのようになってしまいそう…。風化を防ぐ為にも、全ての人間が観なければならない記録。
ユミコ

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