踊る猫

ある子供の踊る猫のレビュー・感想・評価

ある子供(2005年製作の映画)
4.0
困った。実に語りにくい映画である。これほど何の前知識もなく観た方がいい映画もちょっとないだろう。冒頭のブリュノを訪ねてソニアがドアをノックするシーンから始まって、「?」という感覚をキープさせたままで観た方が面白いと思うのだ。だからここから先は完全な蛇足になるのだけれど、大胆な省略と必要最小限にまで削りに削られた台詞回しの鋭さ、そこから生じるキビキビとしたストーリーテリングには舌を巻いてしまう。ここまで無駄が一切ない映画、悪く言えば何も説明しない映画というのもちょっとないのではないだろうか。ラスト・シーン、ブリュノとソニアは思いがけない形で再会するのだけれど、監督は敢えて彼らに何も語らせず幕を閉じてしまう。それが逆に重い余韻を残すものとなっている。彼らの前途は決して明るくないのだ……。
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