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ある子供のmidorixgreenのネタバレレビュー・内容・結末

ある子供(2005年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

定職に就かず、盗みや違法な取引によって生活している青年ブリュノ。彼が彼女であるソニアとの間にできた生まれて間もない赤ん坊を、金に目が眩んで売ってしまったことから彼の人生が転がり落ちる話。
映画の序盤は、題名の「ある子供」は、売り飛ばされた赤ん坊のことを指すのだと考えていた。しかし、ブリュノの幼い言動に焦点を当てた中盤には「ある子供」はブリュノのことであると気付かされ、最後、刑務所でブリュノとソニアが不安と心細さによりしゃくり上げるシーンではブリュノだけではなくソニア、あるいは、子供を持つ親であるこの2人が子供のように泣く姿から、本映画は誰しもに偏在する「子供」の姿を映したものと気づかされる。
香水の香りの変化のように、映画の序盤から最後まで印象が変化していくことにより、「私たちは皆子どもである」というメッセージが自然に伝わるよう技巧が凝らされているようにも思う。
序盤の「子ども=赤ん坊」の既存の概念から、「子ども=大人になりきれないブリュノ」、「子ども=互いに離れた心細さから泣きじゃくるブリュノとソニア」と段階的に客観から主観に移行しており、人によっては拒否反応すら湧くこのテーマが、比較的違和感なく受け入れられるような流れになっている。
幼く、弱く、未熟で、愚かで。「だからこそ」なのか、「それでも」なのか、身を寄せ合って生きていく人間の美しさ、愛おしさが描かれている映画。
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