しゃび

ウディ・アレンの重罪と軽罪のしゃびのレビュー・感想・評価

4.5
ウディ・アレンの中でも特に好きな作品の一つ。好きだけど、観る度に考えさせられてもやもやする。

本作は「倫理観」について深く問いかけてくる映画だ。気になって「倫理」とは何かを調べてみた。

倫理とは
「社会生活において、人が守るべき道理のこと」らしい。

倫理観の難しいところは、道理の基準が人それぞれしっかりとありそうに見えて、実は「背景」と「結末」によって、大きく変わる可能性があるところだ。


例えば、
道端に1万円が落ちていたとする。
この1万円を交番に届けるか。

おそらく多くの人が届けると答えるだろう。でもその時ちょうど職を失っていて、露頭に迷っていたら。
迷わずポケットに入れるかもしれない。


また、最近巷を賑わせている誹謗中傷問題。

snsで、ある有名人に罵詈雑言を浴びせていた人たちは今どういう気持ちなのだろう。自らの行為によって人が死んでしまった。おそらく強い罪の意識を感じているのではなかろうか。


状況どうあれ、1万円が落ちていたという事実は変わらない。また人が死のうが生きようが、誹謗中傷した事実も動かない。

結局社会的な善悪の基準は、物事そのものだけに紐付いているのではなく、背景と結末に多大な影響をうけるのだ。

この映画には日本では馴染みが薄い「神」というキーワードが出てくる。一見神は無情だ。善行をしたからといって救わないし、悪行を行ったから懲らしめるわけでもない。神が仮にいたとしても、ただ見ているだけである。

おそらく倫理観とは、
【一つ一つの選択をする過程で頭を悩ませること」なんだと思う。



【ネタバレ】

「我々は自分の選択を通して自分を知ります。」

というセリフが出てくる。
選択をする際に頭を悩ませ、また選択した結果を見て、さらに頭を悩ませること。
それを通じて、人は自分の心根を知っていくのだと感じた。



この映画の最後に、長いナレーションが入る。メモとして残しておきたい。

「人間は生きる限り苦悩して決断しモラルを選択します。重大な選択もありますが、大半は些細な選択です。しかし、我々は自分の選択を通して自分を知ります。選択こそが、その人物の総決算なのです。ドラマは予告もなく冷酷に襲いかかり、神の創造には、幸福が欠けているかのように見えます。でも愛を胸に秘めた人々は、無感動な世界に意義を伝えることができます。そして、おそらく人間は一生懸命努力することによって、シンプルなテーマから喜びを発見します。例えば家族や仕事から。そして希望から。未来の世代こそこの担い手なのです。」
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