Ryoko

カスパー・ハウザーの謎のRyokoのレビュー・感想・評価

カスパー・ハウザーの謎(1974年製作の映画)
4.5
ただ人間の姿をした生き物でしかなかったカスパー・ハウザーの数奇な生涯。

16年間地下牢で生きていた時は、言葉も知らず、感情も知らず、歩くことすらできなった彼が自分以外の世界に触れ、人間になっていく。
驚異的なスピードで言葉を覚え、思考することができるようになった彼が発する言葉がとても興味深いし、恐怖を感じたら涙が出る、ピアノを聴いたら胸が熱くなる、そういった感情というものがあることを知っていく様も、ふつうの子供が成長していくのを見ているようだけど、とてもおもしろい。
でもやっぱり、「ベッド以外は厭なところ」と言う彼にいちばんしっくりきてしまう。

生きるって意味さえわかってなかった彼にとって、知性を身につけ文明社会で生きることとはどんなだったんだろう・・・

美しい映像とブルーノ・S氏の演技とカスパー・ハウザーの生涯が相まって、深い深い思考の森に迷い込む。
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