ryosuke

恐怖の報酬のryosukeのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
4.8
冒頭、手前から奥まで人物がひしめき合っている中南米の暑苦しい映像と、飛行機が通過するシーンのカット割りで早速期待が高まる。黒煙も無条件でテンションが上がる。やっぱりとりあえず火薬量は増やしとけというもんだな。全体的にサスペンスシーンの編集、アクション繋ぎが楽しい。
ヴェラ・クルーゾーは当然美しいんだけども、ちょっとアホっぽ過ぎてあまり惹かれなかった。
ジョーは思ったより序盤から情けない姿になってしまう。
闇夜にトラックのフロントライトが怪しく光り、運転席に当たる強い照明が異様な雰囲気を醸し出す。
基本的に正統派のじりじりと緊張を煽るサスペンス演出をしておきながら、一番ショッキングなトラックの爆発は事後の光景を突然見せることで衝撃的にするのが上手い。
前半ちょっとだけテンポがのろい(特に導入部はちょっと遅いな)こと以外は完璧。あとちょっとは削れた気もするがやはりこの面白さは二時間半には感じさせない。
消えた轍→飛行機の離陸→彼らは天に昇ったのだ...ってロジックが素敵。
ジョーが死に際に残す「空き地」のセリフも空っぽで何も残らなかった虚しさを象徴する。
油まみれの「池」なんてビジュアルからして素敵過ぎる。足を轢くシーンのエグさよ。
迂回という選択肢には触れられもしない仕事をあの手この手で障害物に阻ませる。
火災現場の炎は尋常じゃない熱量で禍々しく、まるで地獄の業火のよう。
ラスト、明るい音楽が流れる中で踊る人たちと、それと同期するかのように蛇行するトラックのクロスカッティングが物語上の必然である悲劇を予感させる。
一瞬差し込まれるラジオのショットがそれを消す人物の不在を際立たせる。約束された結末でありながら、それでも衝撃的に魅せるクルーゾーは流石としか言いようがない。
ryosuke

ryosuke