星降る夜にあの場所で

時代屋の女房の星降る夜にあの場所でのネタバレレビュー・内容・結末

時代屋の女房(1983年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

本日は、ドラマ「愛が見えますか」で一目惚れをして、亡くなった今でも私の中で永遠の憧れとして忘れることの出来ない人である夏目雅子さんの生誕60年という記念すべき日ということで優作さん同様、イレギュラーで邦画をupさせて頂きます。
夏目さんのお芝居を堪能するなら、「魚影の群れ」か「瀬戸内少年野球団」をお薦めしたいところですが、夏目さんが最も魅力的に見える作品と言ったらぶっちぎりで本作になります。
是非一度、未見のフォロワーさんにも観て頂きたいと思い、どんな作品かを簡単?(文章はちょっと長くなってしまいましたが^_^;)に書いてみました。

人を好きになりその思いを相手が受け入れてくれることで、目に映る何でもない風景が美しく輝いて見えたり、底知れぬ活力が涌き出したり、自分以外の者(物)たちに優しくなれたり、困難に立ち向かう勇気がみなぎったりと…心と身体が著しく潤い弾む思いが制御不能にさえなってしまう。
ところが、その関係が終焉を迎えた瞬間から、まるでそれまでのことが夢であったかのように消えて無くなり、ただならぬ悲哀・孤独・虚無・絶望…が一気に押し寄せ、生ける屍と成り果ててしまう。
そしてその苦しさから逃れるために恋をする(人を好きになる)者もいれば、いつの間にか心がフラットになって性懲りもなくまた恋をする者もいれば、こんなに辛い思いをする位ならもう二度と恋なんてしないと思う者もいる。

また本作の主人公のように、死亡記事が新聞に掲載されるような、全く家庭を省みなかった著名なガラス工芸家を父に持ち(妾も作る)、時代屋という骨董品を扱う店の店主安さん(渡瀬さん)のように、その過程を疑似体験したことで人を好きになれなくなる者もいる。

ある日、そんな彼の前にまるで風のようにどこからともなく現れた美しい女性、真弓(夏目さん)。
初対面であるのにも関わらず、公園で拾った猫を預かって欲しいと頼みつつ、自分もそのまま店に居着き二人の生活が始まる。
ただ真弓は、それが都会の流儀♪なんてことを言って名前以外のことを話そうとはしない。
理由は最後まで明らかにされることはないが、彼女もまたとても辛い思いをしたのだろうとの想像はつく。
だからと言って彼女は、そのお互いにとって都合の良い関係を良しとは思っていないことが言動から伝わってくる。

どんな作品なのかと言えば、邦画というより60~70年代のヨーロッパ的な男女の恋模様を日本の御伽噺風のプロットで描いた作品といった感じです。
邦画として観てしまうと、雰囲気は悪くないが渡瀬さんが格好よくて夏目さんが美しいだけの現実場馴れしたファンタジックな凡作にしか見えないかもしれません。
皆さんが観てきた作品とまたその作品をどのように観てきたかによって評価が別れると思います。

時代屋の店頭に並んでいる物それぞれには歴史があり、使っていた人たちの思い出が詰まっています。
私も古いものが大好きなのですが、きっとそれはそんな歴史や思い出を勝手に想像しながらあれやこれやと思いめぐらすことが楽しいからなのだと思います。
真弓はこんな話をします。
本来なら人に使われて寿命を全うし静かに死んでいく物たちを無理矢理生き返らせてもう一度使えるようにしてしまう私たちは残酷なのか?
それとも死にかけた物を優しく生き返らせて、新たに生きる道を与えている私たちは善人なのか?
安さんは優しくて、私は残酷なのかなぁ~
安さんも気付かないで残酷なのかもね~

また安さんと真弓以外にいくつかのサイドストーリーを描き、テーマに深みを持たせています。
闇市で生きてきた喫茶店を経営する根なし草の中年とアルバイトの女の子との恋の行方。
16の時に既婚者との駆け落ちに失敗した過去を持つクリーニング屋を経営する男とその妻との日常。
小さな居酒屋を営んでいる夫婦(妻は元プロレスラー)
東京で数年働き、結婚のために故郷へ帰る女と安さんのワンナイトラブ。

彼らも時代屋に並べられている商品同様、様々な歴史と思い出が詰まっているわけです。
そんな思い出たちを良くも悪くも最も引き立てる役割を担ってきたのが恋(愛)した思いなのではないでしょうか。

時代屋に飾られている振り子時計。
振り子が動いていようが、止まっていようが振り子時計に変わりはありません。
ただ止まっている振り子時計は時を刻めないし、30分・1時間おきに趣のある音を奏でることも出来ません。

独身・既婚を問わず、あなたの振り子はちゃんと動いていますか?🍀

☆★☆夏目雅子☆★☆
❤️(*´з`)(*´з`)(*´з`)(*´з`)(*´з`)❤️